苗字名前。性別は違えど同じ忍術学園で共に六年間切磋琢磨して絆を深めた一人でもある。名前は拷問といった類いのものが大好きであった。人が苦しむのを見るのが好きだと真顔で言われたときは全身に鳥肌がたったのは今も覚えている。それほどまでも名前は拷問については人一倍勉強し人一倍研究していた。その背を見ていた私はある意味尊敬していたし、敵にまわしたくもないと思っていた。ただでさえ拷問は死以外の救済の処置がないものだ。これほどまでも拷問に情熱をかける奴に拷問をされたら本当に悲惨なものだろう。
そんな名前は学園内で大きな期待を背負っていた。それもそのはず、成績優秀眉目秀麗それでいて鼻にかける素振りは一切なく、上級生下級生同級生と皆から慕われていた。学園を卒業し一年近くたったある日、風のうわさで名前が大きな城に雇われたと耳にした。私も最近ある程度名のある城に雇われたばかりだ。何となくお揃いな感じがして嬉しかった。







「三郎。」
「…どう した。それで終わりか ?」
「…お願いだから、持ってる情報教えてよ。」
「名前らし くない な。お前な ら何としてで も口を割らすだろう っ?」


だらしなく垂れる血液とよだれ。はだけた黒装束からは真っ赤にただれた皮膚が見えているだろう。名前はここで良い地位まで上り詰めたのだろう。名前の周りにいる部下らしき人物らは名前に尊敬のまなざしを向けている。いつかみた下級生が名前を慕いひっつきまわっていたころを思い出した。ああ今はそんなこと関係ないか。
名前も良い仲間を持ったと思う。私が名前の部下に捕まったのは油断が大きな要因だ。自分の力を過大評価していた。こんな奴らに負けないと自負していた。その甘さに付け込まれたのだ。潔く自害しようとしたがそんな隙を与えないところは敵ながら天晴れだと思った。そいつらを名前は指導うしていたのだろう。名前は人に物を教えるのも上手かったから。


「さぶろう。」


小さく名前の口から零れた私の名前。お前が好きな拷問だってのに名前はずっと泣き出しそうな顔をしている。そんなの似合わない。名前は優しいから、私が情報を漏らしたら苦しみを与えず殺してくれるだろう。でもそれは、私のプライドが傷つくし何より短い期間だが雇ってくれた城主にも顔向けできない。名前もきっと同じだ。
ああそんなところも好きだよ。ずっと蓋をしていた思いがぽろりと零れる。愛しい口が私の名前をもう一度呟くのを聞くと私は瞼を閉じた。







鉢屋三郎。性別は違えど同じ忍術学園で共に六年間切磋琢磨して絆を深めた一人でもある。三郎は変装が得意であり、常に雷蔵の顔を被り本当の三郎の顔を見たことは一度たりともなかった。それは少し寂しかったけどもう慣れてしまったことである。何度も三郎の悪戯に引っかかりそれを私が怒り皆が笑う。その空間は居心地が良く、大好きだった。三郎の変装の技術は本当に尊敬していた。六年間一度も見破れなかったのは今でも悔しい。そんな三郎とは敵として出会いたくなかった。同じ釜の飯を食べた仲からを差し引いても私は三郎と戦いたくなかった。それは単純に三郎に対して恋慕を抱いていたからだ。







「三郎。」
「…どう した。それで終わりか ?」
「…お願いだから、持ってる情報教えてよ。」
「名前らし くない な。お前な ら何としてで も口を割らすだろう っ?」


三郎の口からどろどろと溢れる血。いつもなら拷問する相手の血を見ると高揚するのに今は苦しい。見るのも辛い。部下がいる手前目を背けることも瞑ることも出来なかった。本当にどうして。三郎が捕まるなんて。私が三郎を拷問しないといけないなんて。部下が三郎を連れて来たときは本当に驚いた。捕まる何て到底想像できなかった人物が。ぎゅうぎゅうと心臓が締め付けられる。三郎を拷問する度に心臓が悲鳴をあげる。お願い、お願いだから。
三郎が情報を漏らしたらすぐさま私は彼を殺す。出来るだけ苦しませず、あっという間に、死んだことも気づかないぐらい。ここで三郎への拷問をやめるとお世話になった城主様の顔に泥を塗ってしまうし三郎を捕えた部下にも面目が立たない。三郎はそんな私の心の中を見透かしたように薄く笑った。やめてよ、


「さぶろう。」


無意識で呟いた名前。三郎は変わらず笑う。とても嬉しそうに。悪戯が成功したときと同じ顔だ。三郎の顔は焼けただれもう人間じゃないように見える。体も私がつけた傷でぼろぼろだ。三郎の息がか細くなってきた。ひゅうひゅうと辛そうに息を吸う。三郎の肺はもう腐ってるだろう。三日三晩拷問し続けた三郎の体はもう限界を超えているはずだ。いつもの私なら一ヵ月以上拷問し続けることは簡単なのに、三郎だと三日で限界だった。ごめんね、ごめんね。痛かったでしょう。苦しかったでしょう。さぶろう、ともう一度呟くと一人の呼吸音が消えた。私が奪った呼吸音。大好きだった三郎にはもう会うことは出来ない。喉が焼けるように熱くなった。ごめんなさい。瞼を閉じると記憶の中の三郎が笑った様な気がした。



20120116


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