きっかけは何だったっけ。私の必要最低限しか詰まっていない小さな脳みそから記憶を探る。ああ確か、そうだ。娯楽の少ないストーンワールドでスイカちゃんや小さい子たちに息抜きをしてほしくて、あやとりとかお手玉とか、教えてたんだ。そこからキラキラ三姉妹も加わって、調子に乗った私がゲンくんにお願いして顎クイや壁ドン…3700年前流行った少女漫画のワンシーンを再現したのだ。「…ちょっと古くない?」と苦言をもらしたゲンくんは結局スイカちゃんに実演していてノリノリだった。「こんなこといつするの〜?」実演を見ていたキラキラ三姉妹の一人、ルビィちゃんが私に尋ねる。正直これは漫画とかしか見たことないんだよなあ。恋愛に夢見る瞳が私には眩しすぎてうっと言葉に詰まる。「それはねぇ…恋人同士がするんだよ。」見かねたゲンくんが助け舟をくれた。ぺらぺらと言葉をつむいでくれるゲンくんにほっと一息。みんなゲンくんに食い入るように聞いていた。


「…それじゃあ名前と千空はいつもしてるんだよ?」

そういえばスイカちゃんは名探偵だった。スイカの殻を被った瞳が輝いてることを安易に想像できた。周りの子たちは、千空と?うそでしょ?とちんぷんかんぷんな様子。愛想笑いでその場を乗り切り、ゲンくんが上手いことフォローしてくれてその場はお開きになった。でもどうしてスイカちゃんは私と千空が付き合ってるって情報知ってたんだろう。
正直私たちは今付き合っているといえるだろうか?3700年前に私が告白して、千空が応えてくれた。そこから一週間友達のときと変わらない距離感で過ごし、石化した。あのときから恋人らしいことをせずに3700年飛んで、今は用事がないと喋ることがなくなってしまった。千空は石化で私をリセットしたんじゃないかな。それじゃあスイカちゃんが勘違いしている。もう一度話して誤解を解こう。私たちは恋人じゃないよ、言葉にするのは重かった。



お隣の周波数



「スイカはね、千空に聞いたんだよ。」
「え、」
「俺と名前は付き合ってる、って!」

さっきのことを訂正するより先に衝撃的な言葉に驚いた。スイカちゃんは変わらずニコニコしていて嘘を言っているようには見えない。放心状態になっていると、ぐんと腕を引っ張られた。


「スイカ、名前かりるぞ。」
「どうぞどうぞなんだよ!」

ピースして私たちを送り出すスイカちゃんを尻目に、千空はずんずんと歩いていく。連れてこられたのはラボで、クロムくんがいない静かな場所だった。二人きりで話すのはずいぶん久しぶりで、緊張する。さっきスイカちゃんから聞いたことの真偽を確かめたいのに上手く言葉がでない。長い沈黙が責められているようで、たまらず千空の名を呼んだ。


「ゲンから聞いた。テメーが俺と付き合ってないことにしようとしてるって。」

ゲンくんも知ってたんかい、と心の中でツッコミを入れる。私の考えていたこともバレバレだったご様子でさすがメンタリストと感心しながら、じりじりと詰め寄ってくる千空に後ずさった。壁と私の背中はゼロ距離になる。


「ククク…ご所望の壁ドンだ。」

ドンっと壁に手をつきながらそう言った千空の顔は少女漫画のイケメンヒーロー…ではなく、どちらかというと少年漫画の悪役そのものだった。そんな千空も無理をしているようで頬がほのかに赤い。
近づいてくる陰に、そっと目を閉じた。


20200822
title by さよならの惑星


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -