「まーた彼氏できたんだってな。」

ひょっこりわたしの前に現れた丸井先生の言葉であの子を思い出す。顔を真っ赤にして告白してくれた、なにより顔が整った――――わたしの新しい彼氏。彼のことはよく知らない、学年もクラスも、名前はさっき教えてもらったけど少し曖昧。ただあの熟れた視線にわたしは頷くしかなかったのだ。今度こそは、今度の彼氏こそは、上手くいけたらいい。



彼の部活がない日に何回か登下校した。おひるごはんは毎日一緒に食べた。手を繋いだ、キスをした。エッチもした。でも1ケ月もたたないうちに振られてしまった。ああこれはいつものパターンだ。わたしといても楽しくない、何を考えてるかわからない。そう言われてわたしは振られる。筆箱に貼ったつい先日撮ったプリクラを見る、小さい四角の中で笑ってるわたしたち。あーあ、せっかく好きになれそうだったのに。

「俺も高校時代はよく遊んだから強くは言えねえけど、お前は女の子なんだから。もっと自分を大切にしろぃ。」
「先生遊んでそうだもんね。」
「昔の話だよ。」

丸井先生の情報網はすごいなあ。いつも感心する。わたしの、この学校の生徒の交際関係全部知ってるんじゃないかな。わたしが振られたらいつもアフターケアにきてくれる。そこまで傷ついてるわけじゃないけど、丸井先生が来てくれるのが少し嬉しい。こういうときは、いろんな話をしてくれる。高校時代の部活動、ケーキのおいしい作り方、新しく出来た趣味の話。ぽんぽん出てきておもちゃ箱みたいだと思った。いつもわたしをワクワクさせる。丸井先生の歴代の彼女は、遊ばれてても楽しかっただろうなあ。羨ましい、ちくり、ちくり。心臓に針が刺されたみたいだ、いたい。

「わたし結婚できるかなあ。」
「彼氏からいきなり飛んだな!んー俺でも変われたんだから、お前も大丈夫だよ。」

くしゃりと笑う丸井先生がすごく眩しかった。左手の薬指の指輪のせいなのか。ちくり、また心臓がいたくなった。


20180108
先生、あのね。

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