御幸が寝ていた。その無防備な姿にまた私の中でふつふつと愛おしいという感情が溢れだしそうになる。がやがやと騒がしい昼休みだけど、御幸のエリアだけは静かでひとりだけの空間みたい。まるで御幸バリアー。そのバリアを打ち破って御幸の傍にいたいだなあ、だなんておこがましい。そんな馬鹿なことを考えている暇があるなら、私は目の前の数学のプリントを消化しなければならない。まさか次の時間に提出だなんて聞いてない!カリカリとシャーペンとプリントが戦ってる音が騒がしい教室に溶け込んでいる。ときどき…いや結構な頻度で御幸を見る。赤ちゃんみたいな寝顔が可愛い。頬なんて触ったらもちもちしそうだ。あ、また一つ愛おしさが増した。時計を見るとあと10分。さあ、プリントも終わらせないと!


「なあ。」


私が意気込んでプリントに目を向けた瞬間、本当に今の今まで寝ていた御幸の声が私を遮る。まさか。


「お前さあ、それやるか俺見るかどっちかにしろよ。」


はっはっはといつものように豪快に笑う御幸に私の心臓は今にも飛び出しそうなほど激しく動いている。なんで、見てるって。だって、みゆき、ねてた。だめだ、思考が追いつかない。


「赤くなりすぎ。」


そう言って優しく笑った御幸は私の頬をつねった。もちもちしてる、とか、柔らかい、とか、御幸がごちゃごちゃ言ってるけど私の思考はまだ追いつかない。ただ今分かるのは、大きくて長い綺麗な手に触れられるってこと。
倉持の声が後ろから聞こえた。御幸はノロリと立ちあがって倉持の所に行ってしまった。昼休みはあと5分。もう数学なんて出来ない。



20131213
純情の消失

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