向かいに住んでいるデイダラは高校二年生に無事進級してから頭のネジ一本外れてしまったらしい。先月デイダラが真剣な面持ちで私に「オイラの両手の掌に口が出来たんだ、うん。」と告げられたときは本気で救急車を呼ぼうと思った。デイダラは昔から口癖にうんとか使うし変な奴だと思っていたがまさかここまで来るとは思ってもみなかった。その口を見せろと言っても絶対に見せてくれなかったし、多分デイダラの幻覚なんだろうと思うが。なぜこんなことになってしまったのか。デイダラが進級テストのために驚くほど勉強したせいなのか、それとも私がデイダラいじめをやりすぎたせいなのか…エトセトラ。まあ色々理由はあるが、たくさんのことでデイダラの脳みそがパンクしたのだろう。そして中二病になってしまった。ああ残念だ。幼馴染が…無残な姿に…。




「で・い・だ・らくーんっ!聞こえてますかあーっ?」
「うっせーよ!耳元で叫ばれちゃ聞こえてるに決まってんだろ、うん。オイラは今集中してんの!」
「お前こそうっせーよ。バカチンが。」
「お、女が、チッ、チンとか言うなよな、うん!」


耳まで赤くなっているバカチンデイダラを無視してデイダラがひたすらこねていた粘土を踏み潰してやった。それと同時にデイダラの金切り声が粘土臭いデイダラの部屋に響いた。あんなに赤かった顔がみるみる青白くなっていく。何か面白い。げらげらと絨毯の上で笑い転げてるとデイダラの冷やかな視線が降ってきた。何よその目。あんたがズル休みなんかするから私がプリントを届けに行くことになったってのに。むかつく。ほんのちょっと心配して来てやったらまさかの粘土をこねてたっていうね。あの虚しさは一生忘れない。ご丁寧にデイダラは両手に包帯をぐるぐる巻いていた。どうせ口なんかないのに包帯の無駄。エコしろエコ。


「あんた…そろそろ両手の口見せなさいよ。」
「これだけは駄目だぞ、うん。」
「力づくで見てやるんだから…!」
「おっおい!やめろよ!」


思いっきりデイダラを押し倒して包帯をばりばりとめくる。デイダラの手はやはり粘土臭かった。てか爪に粘土こびり付いてるし、きたなっ!デイダラがじたばた動いて一向に掌を拝めることが出来ない。仕方なく、渾身の一発をデイダラの鳩尾に沈めた。デイダラはウッと呻いてくたりと気絶してしまった。ふん、あんたが素直に見せなかったからよ。
私は見るな見るなと言われたらどうしても見たくなるたちなのかもうすぐで掌が見えると思ったらどうしようもなくドキドキしてきた。ま、落ちは分かってるけどね。



「ぎ、ぃ、やあああああぁああぁぁあああ!!!っ!」


やっとの思いで見たデイダラの両手の掌には真っ赤な舌を垂らした口がついていた。その口からよだれが垂れていてそれが私の指についてしまった。ねっとりとした感触、そしてほのかに温かい。ふっと自分の視界がふらついてくるのが分かった。まさか…そんな……本当に口があるなんて…

視界がフェードアウトする前に見た掌の口は笑っていた。



20120304

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