(307号室/デイダラ夫妻)

「今日の収穫いっせーので出し合おうぜ。」
「おっけー。」

デイダラのいっせのーでに食い気味で収穫物もテーブルの上にどさどさと置いた。そして互いの収穫物を吟味する。うーん、今日もデイダラは高価なものを…。こういうところは本当にリスペクトしちゃう。

「あっ、これ私が好きなお菓子!」
「だから盗ってきたんだよ、うん。」
「さっすがデイダラ!大好き!」
「お前もこのばくだん俺の為だろ?さんきゅ。」

二人で笑い合えば夕食の準備に取り掛かる。今日はおでんパーティーだ。もちろん材料は二人で盗ってきたもの。ここのマンションから徒歩二分でつくスーパーは防犯に関してくそだ。私達の大量万引きのせいで経営者が頭を抱えてるのを知っている。それでもやめれないのはこれで暮らしているからだ。ほんと感謝してまーす、だ。



(1009号室/飛段夫妻)

「今日も契約とれたぜぇ。ジャシン様ぁ、俺偉いでしょお。」
「お、お疲れ様。」
「何そんな不満な顔してんだよ。」

ばちんと乾いた音が部屋に響いた。飛段の鉄拳が降ってくるのだ。飛段はジャシン教という宗教に入信してからおかしくなってしまった。今まで働いていた会社をやめジャシン教を勧誘する仕事に就いた。噂で聞くとジャシン教に入信した人はボロ雑巾になるまでお金を絞りとられているらしい。まるで一種の詐欺だ。私達が多額のお金を払わずすんでいるのは多分飛段が幹部だからだろう。そして狂ったように暴力をふるうようになった、思う存分殴り終えたら私にも自分自身を殴る様言うのだ。最初は抵抗があったけど、思い切り殴らないと飛段は倍返しで殴ってくる。しかも飛段は私が思い切り殴ると嬉しそうに目を細め頭を撫でてくれる。それが嬉しくってこれが普通なんだと思ってしまうようにもなった。



(2005号室/サソリ夫妻)

「サソリさん、お勤めご苦労様です。今日はお食事をとられますか?」
「いい。」

サソリさんは私と目を合わせることなく真っ直ぐ自室に入った。いつのまにか私の手は握りこぶしがつくられていて、ぎゅっと力がこもった。これで一週間連続で私の手料理を食べてくれなかった、折角今日は料理の本を見て作ったのに。私の料理が気に食わないのか、むしろ私自身が気に食わないのか。なりゆきで結婚してしまったのを後悔する日々が続いていた。結婚する前はこんなに冷たくなかったのに。ぼとぼと、栄養も見た目もバランスがいいおかずたちをゴミ箱に投げ捨てた。



(3801号室/イタチ夫妻)

私が生まれる前に勝手に決まっていた許婚。今時ありえない。私は本当に好きだった人と恋愛も結婚もせず忌々しい許婚と結婚した。私はどれだけ両家に反抗してもこの結婚は抗えなかった。結婚式も結婚披露宴も驚くほど豪華でお金に不自由ない生活も続いた、でも私はそれでも。こいつは私がどれだけ我儘を言っても怒りもせずただ従順に従った。このマンションだって私が勝手に決めて最上階の三十八階にした、こういうときは夫婦で決めるらしいけど。やっぱりこいつは何の口出しもしない。私がこいつの弟と寝たときも何の反応を見せなかった。

「美味しい。」

そう言って薄く微笑む姿を見るとカッと頭に血が上った。嘘つき不味いに決まってるじゃない。いつも私は台所に立たないが今日は何となく気分で料理してみた。味見すると吐きそうなぐらい塩辛くて不味かった、お世辞にも美味しいと言えない代物を黙々と食べる姿は妙に私の機嫌を損ねるものである。

「そういうとこ、だいっきらい。」



20120128
暁マンション

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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