キル・アース | ナノ



「…………」

「…い、いないね…」


急に走り出したラッキーを捕まえて、空条君と一緒に、行くはずであった飲食店に来た。しかし、テーブルが燃えていたり破壊されていたりといった戦闘の跡は残っているもののジョースターさんとアヴドゥルさんそれに花京院君の姿は見られなかった。

チラ、と空条君の顔色を伺おうと目線をやるが、目元が帽子のツバの影になって顔色を見ることはできなかった。しかし、彼の背後からはドドドドドといったような効果音が聞こえてくるような気がする。

にへら、と曖昧に笑ってごまかそうとしたが、そうは問屋が卸さないらしい。ムニ、と頬を摘まれ、引っ張られた。


「…どうするんだ?」

「りゃ、りゃっきーにゃら、匂いを追えりゅかもしれまへん…」


そう言うと空条君は手を離してくれたが、早くやれと言わんばかりに鋭い目線を向けてくる。ラッキーにおねがい!と頼むと、俺について来い!というような雰囲気で走り出した。流石ラッキー!私に出来ない事を簡単にやってのける!もちろん、それについて私たちも走り出す。

ついた先は、タイガーバームガーデンで、アヴドゥルさんが倒れている銀髪の頭の男の目の前に向けて短剣を投げつけた所だった。この男の名前は仲間になるので覚えている。確か、ポルナレフだったはず。

そして、詳しい状況はわからないが、アヴドゥルさんがスタンド使いの戦いに勝ったという事はわかった。


「炎に焼かれて死ぬのは苦しかろう。その短剣で自害するといい…」


そう言ってポルナレフに背を向けるアヴドゥルさん。ポルナレフは1度アヴドゥルさんに向かって短剣を投げるような仕草をしたが、すぐにそれを引っ込め、今度は自分の首に向けて剣先を向けた。しかし、それもすぐにやめ、短剣を地面に落とした。


「自惚れていた。炎なんかに私の剣さばきが負けるはずがないと…。フフ…やはりこのまま潔く焼け死ぬとしよう…。それが君との闘いに敗れた私の君の"能力"への礼儀…。自害するのは無礼だな……」


そう言って、ポルナレフは気を失った。ポルナレフに纏っていた炎をアヴドゥルさんはパチンと指を鳴らして消し去る。


「あくまでも騎士道とやらの礼を失せぬ奴!しかも私の背後からも短剣を投げなかった……!DIOからの命令をも越える誇りの高き精神!殺すのはおしい!なにかわけがあるな…こいつ…………JOJO!」

「うむ」


ニヤリと笑った空条君は、スタープラチナを出し、ポルナレフから肉の芽を抜き取る。ジョースターさんが後ろでギャーギャー言っていたが、私はこれを見るのが初めてであるため横から覗き込む。
真剣な空条君を見て、なかなか難しそうだなと思った。


「…、ミョウジ。後は任せた」

「はいはい。今はただ気を失っているだけだから大丈夫ね。多少の火傷はあるけれど」

「これで肉の芽がなくなって、にくめないヤツになったわけじゃな。ジャンジャン。ヒヒ!」

「花京院。オメーこーゆーダジャレいうやつってよーっ。ムショーにハラが立ってこねーか!」


そう問われた花京院君は頷けばいいのかどうしたらいいかわからず、困ったような顔で私に視線を投げかけてきていた。

もちろん私は曖昧に笑っておいた。