01 B面



何の気なしに屋上に行って、昼寝をするつもりだった。
天気もいいし、部活もまだ始まらないし。
走り込みぐらいしないと魚住さんに怒られるなぁなんてほんのり思いながら。

そしたらまぁ、女子が靴を揃えて屋上の柵を乗り越えたのが目に入った。
え、飛び降り?

彼女が一歩踏み出そうとした瞬間、もうオレの体は動いていた。試合でボールを取る時より、心臓がばくばくと動いているのがわかる。


「バカヤロウ!危ないだろ?!」


もう必死。
思わず知らない女子に大声で怒鳴っていた。
力の抜けた彼女を抱き締め、柵の内側に引き戻すと、彼女はきょとんと俺を見上げ、状況を理解したらしく、ぼろぼろと泣き始めた。

ごめんなさい、ごめんなさい、
そう言いながら泣く彼女をオレはただ、宥めることしかできない。


「間に合って、良かった」


心からほっとした。
何があったかはわからないけれど、救えてよかった。
柄にもなく怒鳴ってしまったが、しかたがない。

あぁ、こんなにも空が青いってのに。


落ち着いたのか、涙が枯れ果てたのか。
震えていた彼女の体からは力が抜けていた。

「大丈夫かい」
「……はい…」
「まぁなんだ、座ろうか。とりあえずスポドリ、飲む?」
「あ……あり、がとう…」

地べたに座りスポドリを渡すと、横に腰掛けた彼女はぺこりと頭を下げ、少しずつそれを飲んだ。
少し鬱陶しそうな前髪、無造作に伸びた癖毛。黒縁メガネの女の子。
タイの色から同級生ということはわかるが、おそらく違うクラスだ。

「……名前、なんて言うの」
「え……」
「2年でしょ。名前は?」
「……椥辻亜呼…」
「亜呼ちゃん、ね。俺は…」
「せ、仙道、彰、くん…」
「おや、知ってた?」
「バスケ部の…強いってなんか、よく名前聞く…」
「オレも有名人になったもんだ」
「あ、あの、なんで私なんかを助けてくれたんですか…」
「私なんかって…まぁ、通りがかりだったってのもあるけど、やっぱり見過ごせないでしょ」
「……」
「いやー、試合の時より緊張感あったよ。オレ結構瞬発力あるなーって」
「……」
「ごめんね、オレの勝手で止めちゃった」
「や……」
「でもさ、こんなにいい天気だし。一緒に昼寝でもしようよ」

ごろり、と横になると、背中がじんわりと温かい。
隣をぽんぽん、と叩くと、亜呼ちゃんはおずおずと隣に横たわり、小さく体を丸めた。


「部活始まるまで、ね。遅れるとうちのキャプテンうるさいんだ」
「…うん…」


体をトントンリズム良く叩くと、亜呼ちゃんはうとうとと目を閉じ、そのうちうっすら寝息を立てはじめた。まるでちいさな子どもみたいだ。

いつの間にかぐっすり眠ったオレは、彦一に叩き起されることになるがこれは暫くあとのおはなし。















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