よんせんちめーとる番外


「小湊くんって、可愛いよね」
「え? 春っち?」
「春っち? なにそれ、可愛い」
「おお! 名字は俺のネーミングセンスを理解してくれるんだな!」
「え、沢村が付けたの?」
「ああ!」
「へえ。私も呼んじゃおうかなあ〜、なんて!」
「いいよ」
「でも、なんか恥ずかしいかも――って! こ、小湊くん!?」
「さすが春っち。侮れない!」
「栄純くん、声が大きいよ」
「ほんと、暑苦しい」
「な、なにおう!」
「わあ、降谷くんまでいる!」
「名字って、俺への態度と春っちと降谷への態度、全然違うよな」
「そう? そういえば、実は降谷くんとは、受験のときに知り合ったんだよ」
「へえ、そうなんだ」
「名字さんに、駅まで連れて行ってもらった」
「はは。懐かしいね」
「名字さん、すごく良い人」
「じゃあ、名字さんと知り合ったのは、栄純くんより降谷くんの方が先なんだね」
「確かに、そういうことだね」
「僕が一番……!」
「降谷くん、嬉しそうだね」

 そういえばそうだった。確かあの日、降谷くんを駅まで送って、ホッカイロを投げたんだ。本当に、懐かしいな。

「ちょっと、沢村。さっきから、なんで黙ってるの?」
「そうやって、降谷に乗り換えるのか! 俺という者がいながら……!」
「え? もしかして、拗ねてるの?」
「断じて拗ねてなどおりません!」
「うるせーぞ沢村!」
「カ、カネマール……!」
「昼休みだからって騒いでんなよ」
「ははは。金丸くん、ごめんね」
「いや、謝るのは名字さんじゃなくて沢村だろ!」
「うーん……なんて言うか、くせ? みたいな」
「本当に名字さんって、そのバカに甘いっていうか、優しいよな」
「へえ。良かったね、栄純くん」
「ど、どういうことだ春っち!?」
「愛されてるねってこと」
「小湊くん。その言い方はちょっと……」
「うん。ごめん」
「聞いたか降谷! 俺は名字に愛されてるんだってよ!」
「おい、バカ村! 調子に乗るな」
「君ばっかり、ずるい……!」
「あはは」

 うーん、疲れる。
 できれば、小湊くんと降谷くんとゆっくり話したかったのに、それはきっと叶わない。

「私、この中で付き合うなら、金丸くんみたいな人がいいかも」
「え! やっぱり俺なの!?」
「……やっぱりって、どういうこと?」
「あー。私、前にも言ったから」
「そのときも沢村がしつこくってよ」
「本当にね。暫く騒いでたよね」
「ぐぬぬ……!」
「でも、どうして金丸くんなの? もちろん、金丸くんはいい人だけど」
「うーん……金丸くんって、なんか苦労してそうだし、頼りになりそう」
「へえー。それって、俺より?」
「「あ」」

 誰かが話に入ってきたと思えば、私の首に筋肉質な腕が回された。聞き覚えのある声に、みんなはぽかんと口を開いていた。私はというと、みんなとは逆に口をぎゅっと結んだ。
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