御幸


「はあ。誰か、私のために貢いでくれる人はいないかなあ」
「……お前、何言ってんの?」
「御幸にはこれっぽっちも関係ない話ですよー」
「名字のために貢ぐようなモノ好き、この世にいねーよ」
「はあ? うっざ。まだ出会ってないだけなんですけど」
「いや、まだも何も、これからもねーから」
「失礼なやつ。だから、私と倉持以外に友達いないんだよ」
「え、名字って友達だったの?」
「あー。もういいよ。御幸なんて孤独死すればいいんだ」
「はっはっは! 冗談だよ」
「私は冗談じゃない。御幸なんていなくても、私には友達いるからいいよ」
「うわあ、冷たいやつー」
「うるせー。私に貢がない男は、友達なんかじゃないんだよ!」
「お前、男友達いないだろ……」
「いや。まあ、さすがに盛ったけど」
「ていうか、なんで急にそういう話になるわけ?」
「最近、みんなが彼氏の話ばっかりするから……」
「へえ。それで寂しくなっちゃったって感じ?」
「――まあ、そういう感じ」
「ははっ! 名字にも、案外可愛いとこあんだな」
「なんかムカつく」
「将来はプロ野球選手、料理も洗濯も困らない程度に出来る」
「なに、急に?」
「俺、結構お買い得物件じゃね?」
「あー、うん。起きなよ」
「寝言じゃねーっての」
「急にマジな顔すんなし。大体なんでそういう話になんの?」
「なに? ときめいちゃった?」
「黙れ不良物件め」
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