嫌いって言ってみた


※もちろん冗談

【沢村】
「え、はっ! 嘘だろ?」
「いやいや。嘘じゃないから」
「もしかして俺、何かしたか!?」
「さあ? 自分で考えてみたら?」
「いつも課題写させてもらってる、とか?」
「……そんなことじゃ嫌いにならないよ」
「じゃあ、借りてたノートに落書きしたから?」
「ムカついたけど、シャーペンだったから消えたし」
「ええ……じゃあ、何でだよ?」
「だーかーらー! 私に聞かないで、自分で考えてよ」
「あ! じゃあ、化粧ポーチ落としたから!?」
「は? 沢村、お前だったのか……」
「あ……」

【降谷】
「え? 今、なんて言ったの?」
「だからね、降谷のことが嫌いなの」
「え……?」
「な、なに?」
「だめだよ」
「え?」
「君に嫌いって言われるの、嫌だ」
「な、んで?」
「……本当に、分からない?」
「え、えええ!」

【春市】
「そっか……ごめんね。名前ちゃんに嫌われてるなんて知らなかったから、今まで迷惑掛けたよね」
「ううん。私こそ、ごめん」
「でも、正直ショックだな。俺、名前ちゃんのこと好きだったから」
「え? そ、なの……?」
「うん。でも、名前ちゃんは俺のことが嫌いみたいだし、聞かなかったことにしてくれる?」
「小湊、ごめん」
「ううん。いいんだ」
「あの……実は、嫌いって嘘……」
「うん。最初から嘘って分かってたから、いいんだよ」
「え?」

【御幸】
「へえ。お前にしては、面白いこと言うじゃん」
「は?」
「お前が俺のこと好きってことくらい、見てれば分かるんだけどなあ」
「はあ!?」
「早く嘘って言えよ」
「う、自惚れないでよ! 私は別に、御幸のことなんか好きじゃないし!」
「なあ、嫌いなんて嘘なんだろ?」
「なんで……」
「嘘じゃないと、俺が困るんだけど」
「う、そです……」
「はは。良かった」

【倉持】
「あっそ」
「ええ。あっそって……」
「じゃあ、俺のことが嫌いな奴に、それ以外なんて言えばいいんだよ」
「もう少し、悲しそうにするとかさ」
「だから、俺のこと嫌いなんだろ? そんな奴の悲しそうな顔見たら、お前は慰めてくれるわけ?」
「それは、その……」
「な? 何も与えてくれない奴が、多くを求めようとすんなよ」
「ご、ごめん……」
「で?」
「嘘でした。すみません」
「あっそ」

【奥村】
「ああ、そうですか」
「驚いたり、しないの?」
「まあ、先輩が俺のことを好きだなんて思ってませんし」
「そうなんだ……」
「別に、先輩にどう思われてたって構わないです」
「え?」
「俺が追い掛けるのを止めなければ、これからも何も変わらないですから」
「ん? どういうこと?」
「先輩は何も分からなくていいんですよ」
「ええ……」
「精々、悩んでくださいね」

【成宮】
「嘘だね」
「嘘じゃないよ」
「お前なんかが、俺を嫌いになれるわけない」
「既にそういうところが嫌いです」
「ふうん。まあ別に、お前に嫌われたって、俺は何も困らないけどね!」
「……じゃあ、それだけだから――」
「でも! 困らないけど、許さない」
「え?」
「俺のことを嫌うなんて、絶対に許さないから」
「鳴……」
「で、嘘なんでしょ?」
「うん。嘘です」
「ほらね。まあ、許さないけど」

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