「今日、俺誕生日だから」
「お……おう?」


学校に来て早々榛名に声をかけられたかと思えば、突然自分の誕生日の宣言をされた。今まで知らなかったとはいえ、なぜ当日になって言うのか。せめて前日に言ってくれれば、なにかしら準備できたというのに。なにかあげられるものはないだろうかと鞄やポケットの中をあさる。しかし出てくるのはガムや飴の包みといったゴミばかりだった。まあなにもあげられなくたって仕方ないよね、今日初めて知ったんだから。榛名の俺様ぶりはうちの学年では割と有名だが、今回ばかりは前日までに知らせなかった榛名が悪い。まさか、プレゼントをねだってきたりなんかしないだろう。


「なあ」
「なに?」
「俺誕生日なんだけど」
「いや分かったけど。え、だから?」
「プレゼントねーのかよ」
「はあ?」


わたしが甘かった。当然のようにプレゼントをねだってくる榛名に、思わず間抜けな声が出る。そうだ、こいつはそういう奴だった。溜息をひとつ吐いてもう一度鞄の中身をひっくり返す。教科書、ノート、筆記用具、ポーチ、お弁当に財布。ありきたりな高校生の鞄の中身だ。他にはもうないかと探してみると、奥底から包装の崩れかけた小さなキャラメルがコロンと出てきた。触ってみると少し柔らかい。


「榛名、これあげる」
「なんだこれ」
「キャラメル」
「ゲッ!溶けかけてるじゃねーか!」
「仕方ないじゃん、当日に言われたってプレゼント用意してないもん。ほら、生キャラメルだと思えば余裕余裕」
「溶けかけとかいらねーよ、生キャラメルと一緒にすんな。自分で食え」


差し出したキャラメルを押し返され、鞄に戻すのも気が引けたので、そのまま包みを開いて口の中に放り込む。キャラメル独特の甘ったるさが口いっぱいに広がっておいしい。しばらく舌の上でコロコロ転がしていると、榛名がじっとわたしを見つめてそのまま顔を近づけてきた。ちょ、近い。思わず心臓が高鳴る。


「やっぱくれ」
「え……?」
「キャラメル」


どうやって、とわたしが言うより早く、榛名の口がわたしのそれを塞いだ。隙間から潜りこんできた榛名の舌がわたしの咥内を犯していく。固形だったキャラメルが溶けてなくると、ようやくわたしは榛名から解放された。腰に力が入らず、ぺたんと床に座り込む。


「っは……」
「ごちそーさん」
「ちょ、はるな……!」
「今のが誕生日プレゼントでいいぞ?」


ニィッと笑う榛名に、わたしの心臓はいよいよ限界と言うほど強く早く脈を打つ。ああもう、教室のど真ん中でなんてことしてくれるんだばかやろう。とりあえずこの責任を取ってもらおうと力の入らない腰に鞭打って、わたしは榛名の唇に噛みついた。








by 鈴



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