もうすぐ彼氏である元希の誕生日。だけど未だに何をプレゼントしようか決まっていない。プレゼントを渡した後の元希の喜ぶ顔ばかり想像しては、にやけてばかりだ。友人に相談しても「あんたにリボン付けて自分自身をプレゼントしちゃえば?」とふざけた返答ばかりで何も参考にならなかった。こっちは真面目に悩んでるというのに…。

「元希、何か欲しいものある?」

一緒に帰っている途中、本人に聞いてみることにした。部活が終わった後で元希は眠そうに欠伸をしていて、なんだか今は何も聞かずに黙ってたほうが良かったかなぁとちょっぴり後悔したけど元希は疲れているにもかかわらず満面の笑みを向けてきた。

「なに?なんかくれんの?」
「ほら、もうすぐ誕生日でしょ?」
「あー…そういやそうだったな」

忘れてた、なんて言う元希は自分の誕生日を忘れてしまうくらい野球で頭がいっぱいなんだろうな。考え始めたのか立ち止り、うーんとあごに手を添えながら唸っている元希。私も足を止めて、元希の答えを期待して待つ。パッと顔を上げる元希に答えを聞き逃さないようにと耳を澄ませた。

「何もねぇかも」
「え?」

まさかの答えに言葉が出ない。なんて欲のない男なんだ。何かひとつはあるんじゃないか、と尋ねてみるも元希は首を横に振るだけだった。

「何もないなんてありえない」
「なんでだよ!」
「だって私、元希の喜ぶ顔が見たいの」

いつも練習で疲れているのに私は何もできずに隣にいることしかできない、それなのに元希はいつだって私に良くしてくれる。元希は私が横にいるだけで十分、と言ってくれるけど私は感謝の気持ちでいっぱいだ。誕生日だけでも元希を喜ばせたい。

「顔にはあんま出さねぇかもしんねーけど、お前といる時間はいつも喜んでるって」
「でも元希にはそれ以上に良くしてもらってる、から!だから元希が生まれた日をちゃんと祝いたい!」

あぁ、また我儘言ってる。だけど今回だけは譲れない。大好きな人が生まれた大切な日を大事に過ごしたいから。

「そんなに言うなら…まぁ、欲しいもんあるっちゃあるんだよな」
「え、ほんと?」
「おー」

そう言うと元希は数回ほど咳払いをしては先ほどの眠そうな顔つきから一転して真面目な表情を浮かべる。ぐいっと左手を掴まれたと思えば、優しく薬指を掴まれた。

「元希?」

元希を見れば夕日が手伝ってるせいでもあるのか、顔を赤くしていた。でも、どうして顔を赤くしているのか私には分からない。元希はというと目をせわしなく泳がせては、あーとかうーとか言葉にはなっていない音だけを発している。

「っし、よく聞いとけよ?」

やっと何かを言う決心をしたようで真っ直ぐと私をとらえる元希の少し釣り上がり気味の目。

「俺以外の奴に、指輪はめさせんなよ」

ぎゅっ、と私の薬指が強く握られる。

「え?あ、うん」
「お前、よく意味分かってねーだろ」
「…えへへ」
「ったく、仕方ねぇな」

頭をガシガシと掻き上げて、やはり先ほどのように顔を赤くする元希。

「結婚してくれ」

一気に体温が上昇した気がする。まぁ今は無理だけどよ、と笑いながら言う元希に抱きつく私。あぁ、なんて私は今、幸せな時間を過ごしてるのだろう。元希が欲しいプレゼントを聞いていたはずのに、逆に私が多大なプレゼントを貰ってしまったようだ。

「うん、もちろん」

握られている薬指から元希の熱が伝わってきた。








by 上野心



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