私は彼が太陽みたいだと思っていた。自分の力で彼は光っていて、周りの皆も輝いていて、彼が野球をしている姿はとても綺麗だ。一時期彼は輝きを失っていた時があったけれど、少し経ったら彼はもう一度輝きだした。

それを見て私は思ったんだ。私は表すならきっと惑星だと。自分の力では輝くことが出来ない、彼の周りをうろちょろしているような邪魔な存在。きっと彼は鬱陶しいと思っているに違いない。だってもし私が彼の立場だったら鬱陶しいと思っているもの。


「今日もありがとう」

『大丈夫です、秋丸先輩』

「じゃあ榛名のこと頼むね」

『はい、分かりました』


最近、彼はまた輝きを失い始めていた。練習をサボらない彼がフラーっと何処かへ練習の間に行ってしまうようだ。前回は中庭、前々回は部室。色々な場所に行っている彼は今回は何処へ行くのだろうか。


「また、お前かよ」

『すいませんね、先輩方じゃなくて。秋丸先輩が言うには私は榛名先輩を見つけるのが一番早いそうですよ』


屋上の更に上の梯子を登った先にいた彼は私を見ると凄い嫌な顔をした。そんな顔をするなら私に見つからない所にいてほしい。そして先輩方に見つけてもらえばいいのに…。


「お前、俺に言うようになったよな」

『そりゃあ、しごかれてますから秋丸先輩に』

「無駄なしごきだな秋丸の」

『いえ、大切なしごきですよ』


苦笑いをしてみれば彼はすぐに、部活に戻るかと言った。前回も前々回も私が彼を見つけた時にはすぐに部活に戻っていった。多分彼は誰かに見つけてもらいたかっただけなのかもしれない。それは別に何も思っていない私でも良いと思う程に。

彼はきっと自分の光が失い始めているのに気がついている。だからこそ自分が消えた後に、その光の跡をたどって誰か来るのを彼はきっと待っているのだ。


『先輩』

「なんだ?」

『貴方がどこへ行こうと私が愛を届けるよ』


先輩が何処かへ行こうと私が必ず見つけ出しますから。先輩は寂しかっただけでしょ?
と笑ってみせると、彼は言葉の意味が分かったのかいつもの光の輝きに戻っていつもの笑顔で私に向かって「ありがとう」と私にしか聞こえない小さな声で呟いた。








by 沙希



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