冬のホグワーツの寒さは厳しい。
白い息を弾ませ、マフラーをたなびかせながら僕は急いでとある場所へと向かっていた。
今日は確か、火神君と青峰君がクディッチの対戦をしているのだ。それを見に行くと約束したのに、不覚にも僕は珍しく寝坊してしまったわけで。

「…やばいです…ね、はぁ」

パタパタという乾いた音が廊下に響く。急いでいたためにゴーストにぶつかり…いや、ゴーストをすり抜いたりした。
ゴーストをすり抜ける感じはあんな感じだったんだ、とよく分からないが納得してしまった自分が何だか悔しい。

とにかく急がなければ。
そう、急いで足を動かすと、何故だかもつれて僕は盛大に転んだが、まあ何もなかった事にしよう。
擦りむいた膝が痛かったなんて、そんな訳無いですよ。


***

「おっせーぞ!テツ!」
「黒子、てめーっ!」
「すみませ…ゆる、許してくださ…、死ぬ…うっぷす…」

クディッチの競技場には、眉を潜めながら怒鳴る火神君と、口調は乱暴ながら万遍の笑みを浮かべる青峰君の姿がすでにあった。
観客席には、緑色の髪。緑間君も来ていたらしい。

『…お、俺は用事があるからいかないのだよっ!』

なんて言っていたのに、素直じゃないにも程がある。

僕は走りつかれて、その場にばたりと倒れ込んだ。その時の青峰君の絶叫、僕は一生忘れないと思う。
倒れ込んだ際に視界に映った緑間君が、杖を取り出して僕に向けた。

「…浮遊せよ」
「…ふぉっ!?」

僕の身体が浮遊して、そのまま観客席へ運ばれる。
そのまま僕は緑間君の隣に降ろされた。緑間君はふいっと顔を背けてしまっているけれど、耳が赤いのが分かる。
ツンデレめ、可愛いとか全く思ってないですからね。

「…ありがとう、ございます」
「…別に、何もしてないのだよ!」

ツン、とした態度を取り続ける緑間君に少し苦笑をして、競技場の方へ目を向けた。青峰君と火神君は既に箒にまたがり、浮遊している。
そろそろ勝負が始まる頃だろうか。

「まあきっと、火神君がまた負けて泣き崩れますよ」
「アレのおもりは嫌だな…黒子、全てお前に任せたのだよ」
「ずるいですよ!?」
「…むぅ」

緑間君はほっぺたをぷくぅと膨らませて僕を見た。はっきり言うと可愛い。赤司君に呪いをかけられ小さくなった分だけ幼く見えるものだから、愛でてあげたくて仕方がなくなってしまう。

「……はぁ、じゃ、2人で頑張りましょうね」
「むぅ…じゃあ、第14回火神お疲れ様どんまいの会のバタービールは割り勘なのだよ」
「わかってますって」

ふふ、と笑いながら視線をグラウンドに戻すと、丁度火神君が箒から落ちてしまったあとだった。



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