「それで、お前たちは何でそんなにボロボロなんだい?」

場合によっては2人のメニューを5倍にしなければならなくなるけれど、と赤司が威圧感を放ったそれはそれは素晴らしい笑顔で俺と緑間を見下ろした。体育館で正座させられてから早30分、そろそろ足が感覚を無くし本当に限界なのだが、身じろぐ事すら許さないよと言わんばかりに睨みつけてくるものだから、足のゆび一本動かす事はできない。
それは緑間も同じらしく、痛みか痺れた時に感じるあの特有の重さからか、顔を歪めて口を開いた。

「青峰が悪いのだよ!俺のロッカーにえ、えぇ…ろ、エロ本なんて…っ!」

おい、こいつ本当に男子中学生か。
いや、確かに悪かったとは思っている。いくら自分のロッカーが汚くて、さつきに見つかったらまた五月蝿く言われるからって他人のロッカーに隠そうなんて考えた俺がバカだった事は分かっているのだ。
そして、偶然それが緑間のロッカーだっただけだったのだ。それは理解して欲しかったのだよ。

しかし、いくら不意打ちだったからとは言えどエロ本程度でこの反応。これから保健の授業どうするんだよ、エロ本持ってねぇのかよ、何それ天然記念物。

「…緑間ァ…お前、まじで大丈夫?」
「しっつれいな奴だな貴様!!大丈夫に決まってるだろうがバカめ!貴様みたいに脳味噌と下半身が直結してないだけなのだよ!」
「ンだとてめーゴラやるのか!?」
「あぁん?貴様こそやるのか?受けてた…いたっ」

緑間が小さく悲鳴をあげた。
あ、そうだ今は赤司の説教中だったな、忘れてた。やばいこれは不味いかもしれない、とギチギチ鳴る首をぎこちなく上に動かすと、覚醒した赤司様がそこにいらっしゃった。
緑間、逃げて超逃げて。
つか一緒に逃げよう、トンズラしよう。
緑間を見れば、威圧感もとい殺気を感じ取ったのか瞳がうるうると潤んでいる。そして縋る様に俺を見た。よし、逃げよう緑間。
しかしそうはさせまいと、赤司が笑顔をより黒くして俺を睨みつけた。あれ、足が動かない。超怖い。助けて神様。

「少なくとも緑間は外周10周で許してあげる。でも青峰、お前は俺が良いと言うまでは外周を続けるんだね」
「はぁ?!なんで…」
「今の話を聞く限り悪いのは青峰だろう。ほら、さっさと外周行って来い、そして頭を冷やすんだね」

待って赤司、今まで正座させられてたから血が回ってねぇんだけど。
そう言うと、赤司は女子ならコロリと落ちる笑顔を貼り付けてこういった。

「そんなこと知るか、無理やり回したらどうだ」



****

「死ぬ程…疲れた……」
「全くだ…おしるこぉお…」
「てめーの頭は甘いもんばっかだな…」

あれから暫く、俺たちはずっと外周を続けていた。
10周で本来ならば終わりだったはずの緑間だが、

「先にお前を叩いたのは俺なのだよ。俺もまだ走る」

と言って、結局最後まで付き合ってくれたのだ。きっと、奴なりの"ごめんなさい"だったのだろう。
だから俺も、帰りにアイスを奢ると約束した。ボキャブラリーの少ない、素直じゃない俺の精一杯の謝罪だったわけだ。

「結局バスケはできたけどよぉ…なんか物足りねぇ」
「まあ、仕方ないのだよ。あと青峰、明日授業中寝るなよ」
「え、無理!」
「あほ!」

だって数学とか耐えられねぇもん。仕方ないだろうと思う。しかしこの堅物は許してはくれない。どんなに巧妙に寝ようが起こしてくるのだ。全くもって不愉快な事だ。
まあ、それだけこいつが俺を見てると思えば、満更でもないけれど。

「…あお、みね?」

どうやらじぃっと見ていたようだった。訝しげに眉を潜めてこちらを盗み見る緑間の仕草が可愛らしい。
気付けば緑間の後頭部に手を添えて、緑間に噛み付くようにキスをし掛けていた。

「ん、んんっ、!」

驚いたように目を見開き、胸をどんどんと叩いて抵抗する緑間。
それも可愛いけれど、すこし大人しくして居て欲しい。
緑間の唇を無理やり舌でこじ開けて、逃げる緑間の舌に自分のを絡ませてやる。
深くなると、深くなる分だけ緑間は弱い。

「ん…ふぁ、」

気付けば抵抗していた手は胸に添えられ、がくがく鳴る膝を必死に理性で支えていた緑間は、唇を離すと一気にもたれかかってくる。そして、苦しいのだよばか、と一言。

「…悪ぃ悪ぃ、つい」
「…つい、じゃ、ないのだよ…っ!も、知らんっ」
「悪かったって!」

ふい、と余所を向いた緑間の髪をあやす様に撫でて謝ると、緑間は小さな声でおしるこ追加で許してやると一言。

なんだこいつ、ちょろいな。










「…何あのリア充」
「違います赤司くん、あの2人はまだできてません」
「!!?」
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テーマ「人外ファンタジー」
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