▼青緑
もうすぐ期末テストがやってくる。
非常にやって来てほしくない厄介な敵が確実に一歩一歩と近づいてくる。
RPG風に言えばそんな感じだろう。実際期末テストは残り一週間を切っていた。
「…緑間ぁ」
「なんなのだよ」
「さみぃ」
勉強を教えに来てくれた緑間は、ずっと俺の一切使われていない教科書を睨みつけている。俺は面白く無くて緑間に声を掛けるが返事は素っ気ない。なんだよ馬鹿、構えよ馬鹿。
「緑間ぁー」
「うるさいっ!なんだ…」
「ほれ、おいで」
俺は両手を広げる。奴が低体温な為にきっと今は足や手先はガチガチに冷えている事も、俺が体温が高く温かい事を承知の上だ。
これ以上にない奴への甘い誘惑。実際緑間はもぞもぞと動いていた。でも、奴の異常に高いプライドが邪魔をしているのだろう。俺から抱き締めてやるのもいいが、何だか面白くない。
「緑間」
「…!」
「おいで」
二度目。
優しく声をかけてやれば、エベレスト級のプライドもあっさり崩落。
遠慮がちに、キュッと回された腕や密着した身体から伝わる体温は、やはりひんやりしていた。
「あおみね、」
「あん?」
「……馬鹿め」
「はっ、上等」
憎まれ口はいつものこと。
俺は真っ赤に染まった奴の頬へそっと手を差し入れた。
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