不器用で可愛げない君だけど


「ふぁー…眠い」



お日さま園でもっとも日当たりが良いであろうこの場所。
ぽかぽか暖かい陽射しを一身に浴び、春風がぴゅうっと横切った。
そんな中、体を丸めてごろんと寝転ぶマサキはまさしく猫のようで微笑ましく、ヒロトはマサキの髪を梳きキスをした。
すると、『んー…』と甘えた鳴き声のように声をあげる。



「マサキはほんとに猫みたいだね」
「そうですかぁ…?」
「うん、愛くるしくて守りたくなる」



そう言うとマサキはヒロトに向いていた顔をぷいっと真反対にしてぶつぶつと独り言を言い始めた。
照れ隠しの一種だろう。
昔から変わらないままだ。
あの時もヒロトが褒めてあげたりいい子いい子と頭を撫でてあげたら途端にそっぽを向いてぐちぐちうだうだお経のように呟いていた。
今だから言えるが、それは怪奇現象並みに怖かったと、ヒロトは軽く身震い。



「マサキは他から見ると少し大人びた、感情を表に出さない難しい子だとか思うかもしれないけど、それは違うんだよね。ちゃんと子どもみたいにはしゃいでやんちゃな面もあるし、喜怒哀楽の感情だってちゃんとマサキなりに表してる。たまに悪態をついちゃうときもあるけど、俺は知ってるよ。その後自己嫌悪して素直になろうと努力してるところ。俺、そういう子って大好きなんだ。見えない努力家っていうのかな」


「な、なに言ってんですか…、聞いてて恥ずかしい……」


「あれ、口に出してた?」


「はい、それはもう思いきり」



起き上がり、真っ直ぐヒロトの目を見据えた狩屋はそう言った後、何故か赤面をして口を動かした。


例えるならピンクと言うべきか。
いかにも春らしい優雅な風景だった。
ピンクに染め、爛々としたチューリップが咲き誇り、一匹の蝶が密を吸いにやって来た。
園内にしては珍しい騒音もなく、どこからかにゃあとノロケた鳴き声が聞こえた。
上空には青いキャンパスに色一つ施されていない晴天。
ただ唯一、飛行機雲がもどかしく描かれていたが。



再びぷいっと拗ねたかのように見える照れ隠しをしたマサキは耳まで赤く。
『俺も、ヒロトさんみたいな人大好きですよ。一生懸命、俺なんかのために尽くしてくれる人』
やっぱりマサキはただ不器用なだけで、ほんとはこんなにも真っ直ぐ自分の気持ちを伝えられるんだ。
頭を撫でてみると、また猫のような鳴き声を言ってみせた。


fin


writer:竜虎さん

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