不釣り合いなくらいが丁度いい


顔は美形。性格はまあいい方で極め付けには世間に名を馳せている会社の若社長、そしてサッカーブームの火付け役となったあのイナズマジャパンのメンバーでなんと元宇宙人。(ただしこれは黒歴史らしい、本人曰く)
もうなんと言うか、一部を除けば完璧で世の中の女どもが放ってはおかなさそうなプロフィールを持っているその若社長ことヒロトさんは驚くべき事に俺の身内に近い人だったりする。
正直に言ってしまえば俺はこの人が苦手だ。いや、苦手と言う表現はちょっと語弊がある。
なんと言うか眩しいのだ。
もちろん眩しいと言う表現の中には俺の中のヒロトさんへの劣等感やら尊敬やら憎悪やら様々な感情が入り混じってぐちゃぐちゃになって眩しいと言うなんとも微妙な表現につながっているわけで、表現が微妙なのは気にしたら負け。友達曰く俺の国語的なセンスのなさは壊滅的らしい。(ただし納得はしてないけど)
ヒロトさんは俺にやたらと構うのだ。
雷門に転校した時にしろ瞳子さんが気にかけるならまだわかるけどなんでヒロトさんまで俺の様子を天馬くんに聞くのか俺にはわからなかった。
ましてや俺のこの性格だから憎まれ口を聞きまくって俺的には尚更理解できなかった。

「ねえ狩屋」
「!?え、あ、ヒロトさん」
爽やかな声が鼓膜を揺らす。
不意に声をかけられ思わず挙動不審になってしまった。
「そんなにおどろかなくてもいいじゃないか」
苦笑しながら待った?と言葉を続けるヒロトさんはジャケットを脱ぐ動き一つもスマートでドキッとしてしまったなんて俺はどうしちまったんだ…!

「い、いやーちょっとボーッとしてたんですよ」
さっきの動悸はきっとほんの数秒前までヒロトさんの事を考えてたからだよな。
勝手に頭の中で結論を出してヒロトさんとの会話に集中する事にした。
「へー狩屋でもボーッとするんだね」
ヘラヘラ笑うヒロトさんもイケメンでなんか悔しくなってきた。

「そりゃ俺も人間ですから」
皮肉っぽく切り返すとそれもそうだねと笑って言うヒロトさん。
つーかこの人は俺をなんだと思ってんだよ

ニコニコ。
その擬音にふさわしい笑顔を浮かべる俺の正面に座る若社長。
気味が悪いくらいの笑顔でそんなに見られると正直気まずいんだけど、うん

ニコニコ。
さっきから数分経っても無言のまま笑顔を向けている元宇宙人。
本当になんなんだよ…

そこからさらに数分。
「…ヒロトさん、言いたい事あんならはっきり言ってくれませんかね?」
俺はついに沈黙に耐えられなくなってしまい口を開いてしまった。
これがなんかのゲームとかだったら俺の負けだろう。

「好きだよ狩屋」
唐突に告げられた言葉。
一瞬俺の頭はフリーズしてしまった。
「・・・は?」
この人なに言ってんの?
やっぱり本当に何かのゲームだったんだろうか

「だから好きだよ狩屋」
俺がしばらく黙って考えているとまたヒロトさんの口が開かれた

「なに言ってんのあんた・・・と言うかどうしたんですか?」
ついに頭がイカれたんですかと言おうとした瞬間またヒロトさんの口がまた開かれた

「だって狩屋が言いたい事あるなら言えって言ったんだよ?だから言ったまで。それだけ」
・・・なにこの笑えない冗談。
つーかヒロトさんが冗談とか言えた事に驚きが隠せないんだけど。

「あれ?狩屋もしかして信じてない?」
本気できょとんとするヒロトさん。これが本物の天然なのか…いや天然ダラシ?不覚にも少しときめいたとか冗談だと信じたい。

「いきなりあんな事言われてホイホイ信じる奴が居たら逆に見て見たいんですけど」


「うーん、たしかにそうだね」
そう言ってうーんっと唸り出すヒロトさん。
本当にこの人はなんなんだ。別にヒロトさんが嫌いとかまったくそういうわけじゃないけど俺とヒロトさんは釣り合わなさすぎる。そもそも性別だって…

「 もし仮に、仮にですけど俺もヒロトさんを好きだって言ったらどうするんですか?」

「とりあえず抱きしめるよ、思いっきり狩屋のことを抱きしめる」

そう言い切った淡色のグリーンの瞳は揺るぎなく俺を見つめていて思わず視線をそらしてしまった。なんか急に小っ恥ずかしくなって来て顔に熱が集まる。未だ無言で俺を見つめるヒロトさん。さっきとは打って変わって真剣そうな表情。
軽々しく好きとか嫌いとか言ってはいけない。俺の直感がそう告げていた。

「…俺なんか全然釣り合わないし、ヒロトさんには…」

「そんなの関係ないよ、俺は狩屋が好きなんだ」

「…お、れも好きかも、しれないです…」
そう言った瞬間俺を思いっきり抱きしめたヒロトさん。
有言実行とはこのことだろう。


「今はまだそれでいいよ、でもいつか絶対…好きって言わせてあげるからね」

釣り合うとか釣り合わないとか、年齢差とか性別とかそんなの関係ないくらいヒロトさんが好きって言える日はそう遠くない気がするけど今はまだこの生ぬるくて心地いい関係にとどまっていようと思う。

だって絶対その日はすぐ来ると思うから。



writer:たろさん

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