「…なにしてんの、豪炎寺」
「…私はイシドシュウジだ」
「……なに言ってんの、豪炎寺」
「……」


仕事にも蹴りがつき、時間も空いたので雨宮の様子を見に来たら急にガラガラッと扉が開き買い物袋やら鞄やらをたくさん提げた人が入ってきた。


「………まさか、ごんべか?」
「うむ。いかにも。」


入ってきて早々、あからさまにお前は何をしてるんだと言う目で見られ、さらにはドン引きするとはなんて失礼な奴だ。しかし、俺のことを豪炎寺と呼んだ辺り、知り合いのようだ。学生時代、女子と話すと言ったらサッカー部のマネージャーくらいのものだったし、女は化粧をすると化けると言うがこの独特の雰囲気と人の話を聞かない所からするとこんな奴は俺の知り合いの中に一人しかいない。よくよくしっかり見ると最後に会った日から数年経ったとはいえ、少しあの頃の面影が残っている。
こいつは間違いなくごんべである。

その時、後ろにいた雨宮から「あ、姉さん」なんて声が上がる。
…そうだ、雨宮。ここは雨宮の病室だった。しかも雨宮の病室は個室であるため、必然的にごんべは雨宮となんらかの関係があるということになる。親と子?いやいや年齢的におかしい、若すぎる。まさか彼氏か?!……いやいやいや、ごんべに限ってそんなことはありえない。確かにごんべは虎丸とか立向居とか年下に良く懐かれていたが、流石に10歳下の中学生を相手にするような奴ではない。どちらかと言うと一緒にふざけて遊べてしまうだろう。…確信を持っていえるのが逆に怖い所だ。とりあえず本人の口から聞くのが一番だろう。


「お前こそ何を…姉さん?」


そこで漸く先程の雨宮の言葉が脳に届く。


「ん?あぁ、太陽は私の弟。そういや、まだ誰にも言ってなかったかー。」


落ち着いてみればごんべの名字も確かに雨宮だった。
10歳差の兄弟というのも信じがたいが、これまでに1人ぐらいはそんな奴の話を聞いたことがあるような気がする。本当に稀ではあるが。


「考えすぎは良くない。ダメ、絶対!」


気がつけばさっきまで雨宮の頭を撫でていたごんべが呑気に私の無意識のうちに刻まれたのであろう、眉間の皺を突いていた。しかし随分と大人になったものだ。あれから10年。全く変わっていないという方がおかしい。ただしコイツの場合は外見に限るが。

そんなことよりも、だ。突くというよりかは刺すと言った方が適切な強さでグサグサとするコイツに弟と同じ扱いか、とか、お前は本当に俺と同い年か、とかいろいろ突っ込んでやりたいところではあったが、満面の笑みを浮かべてあまりにも楽しそうにしているので、とりあえず眉間に本当に爪が刺さるまではしばらくこのままの状態でいることにした。




聖帝イシドシュウジの受難
(あ、そうそうさっき虎丸がいてね、)
(やっぱりかわいかったから頭撫でといた!)
(…虎丸…!)
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