俺のクラスの委員長はダサかった。西野空は「もしかしたら結構美人かもよ?」と冗談半分で笑いながら言っていたが、俺にとってはそんな冗談も言えないくらいダサかった。ちなみに西野空には眼科に行くことと、サングラスを変えることを進めておいた。

第一に容姿が酷い。
前髪は長く、髪型は常に三つ編み。スカート丈はほとんどの女子が守っていない学校規定の膝丈よりも下で、眼鏡は重そうな分厚いレンズが入った黒渕の地味なもの。ハデだと言われる天河原では勿論、他の中学でも確実に浮くだろう。事実、浮いているのだ。

まぁ、容姿は馬子にも衣装というし、ある程度正せば見えないこともないかもしれない。
それよりも問題なのは奴がとてつもなくドジなことである。
毎日必ず一回は転け、体育の時間には捻挫し、ボールを顔面で受け止めて鼻血を出し、椅子に座ろうとして床に尻を勢いよく強打し、図書館ではその字の如く本に埋もれ、掃除の時間には雑巾掛け用のバケツをしょっちゅうひっくり返す。その不憫さは不幸を自ら呼んでいるのではないかと思うくらいだ。



***



そうして今、ノートを運んでいたらしい奴は階段を踏み外し、その下を丁度通りがかった俺の上に落ちてきた。硬い廊下に打ち付けられた身体、散乱したノート、腹部にかかる重み。強打した痛みに歯を食い縛りなから顔を上げ、委員長の顔を見………、誰だお前。



「いっ、たたたた…あ、ごめんなさい!」



目の前の見知らぬ女は組み敷かれてる俺の存在に気づくといそいそとその上から退き、尻餅をつくようにして廊下に座り込んだ。彼女はどうやらあまり目が良くないらしく眉間に皺を寄せて、俺の顔を覗き込む。



「…あの、巻き込んでしまったところ、大変申し上げにくいのですが…」
「……」
「私の眼鏡知りませんか?」
「…あっ、あぁ、ほらよ」
「ありがとうございます!」



少しその距離の近さに引き気味になりながら俺の手元に転がっていた眼鏡を渡すと、



「あ、隼総くんでしたか!」



それはやっぱりうちのクラスの委員長だった。当たり前といえば当たり前なのだが。
視界がクリアになったのと、巻き込んでしまったのが同じクラスの俺だとわかったからなのかほっと安心したように息を吐き、再び礼を言い、そして勝手に自分のどんくささについて反省会を開き始めた。委員長のほぼ黒歴史のような武勇伝などどうでもよかったので、話は聞かずに俺は一人反省会に夢中になっている彼女の眼鏡に触れた。



「、え?隼総くん…?」
「…こっちのがかわいいと思うけど」



俺を見上げているそのアホ面に素直に思ったことを口にすると、暫く呆けていた彼女は突然顔を真っ赤にし、俺の手から眼鏡を奪い、散らばったノートを素早くかき集め、猛ダッシュで目的地であろう職員室とは全く逆の方向に駆けていった。



…案の定、1メートルも進まないうちにまた転けたが。




隼総くんと委員長
(わわわわ!重ね重ねすみません!)
((とりあえず髪形と眼鏡止めさせるか))
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