「元居た星に、月に帰ろうと思うの」




例えば明日地球が終わるとしたら。例えば今日の放課後、宇宙人に拐われるとしたら。例えば今、目の前の彼女が唐突に星に帰ると言い出したら。果たして僕はどんな行動をとるべきなんだろう。



「だからねヒロトくん、君とはもう会えないかもしれない」
「…ごんべちゃんと会えなくなるなんて寂しいな」
「大丈夫だよ、ヒロトくん。私がいなくなっても代わりがいるから。きっと寂しくないよ」
「ごんべちゃんはどうするの?」
「わからない。でもやるべきことがあるの。なんとなくそう感じるの」
「ごんべちゃんは寂しくないの?」
「…寂しいよ。けどこれは私にしかできないことだから。王様が直々に私を呼んでるの。行かなくてはいけないの」
「…僕はごんべちゃんといたいな。今ここにいる君とずっと一緒にいたい。だから君が月に帰ると言うなら僕は力ずくで止めるよ。絶対に君を行かせはしない」
「…本当に、本当にそれでいいの?もしかしたら大きな隕石が落とされるかもしれない、地球が危機に晒されるかもしれない。それでもヒロトくんは私と一緒にいると言うの?」
「そのくらいどうってことないさ。なんてったって僕は元宇宙人だからね」




もしも明日地球が終わるとしたら、僕はいつも通り君の隣にいよう。もしも明日の放課後宇宙人に拐われるとしたら、僕はなにがなんでも君の元へ戻ると約束しよう。もしも君が突然月に帰ることになってしまったら、僕は君の手を取って二人だけの愛の逃避行をしよう。そうしたらずっと君の隣に僕がいて、僕の隣に君がいる。あぁ、こんなにも幸せなことが今まであっただろうか!今にも幸福に押し潰されてしまいそうだ!幸せに押し潰されてしまう前に月からの使者に君が拐われないよう君の手をぎゅっと握ろうじゃないか。




この世界は愛に満ちている


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