それは、数年前に遡っちゃったりする…
(めんどくせぇ…)
この頃から口が悪かった私は、青系のバッグを背負ってジーパンのポケットに手を突っ込んで歩いてた。今から思えば軽く不良っぽい、いや…ただの痛い子かも。空は薄く雲が掛かっていて、青空が好きな私はあまり機嫌が良くなかったのかもしれない。私の家は坂の上にあって、その坂道と言うのがかなり急で疲れるから大っ嫌いだった。そして、その坂道を登っているところである音に気付いた。同い年くらいの男子の笑い声…家に近付くに連れて大きくなっていく笑い声に、眉間に皺が寄っていただろう
(また、何人か遊びに来たの…?)
私には、1つ年上の兄が居る。私がその時4年生だったから、兄達は5年生だ。その兄が、毎週1回くらいの間隔で友達を連れてきて遊ぶ。自慢じゃ無いがウチの敷地は広くて森に囲まれている為、車は通らずどんなに大声を出していても怒られはしない。学校とかじゃないとそんな風に大声出して遊べなかったから、5年生と言う遊び盛りの兄達には丁度良い遊び場だったのだ。だが、正直うるさ過ぎる。私がテレビを見ている時でもその部屋の横を通るもんだから、テレビ等の音がかき消されて不愉快だったのを今でも覚えている
「死ね…」
小さく呟いて、最後の坂道を登っていく。家の塀のところに、誰かが居た
「あ…」
そいつが、小さく声を上げた。肩で息をしていて、塀の中から数名の叫び声などが聞こえてくることから鬼ごっこでもしているのだろう。色白でチビで、細い。だが、性格はそんな大人しくない。力は、そんなに無かった。なにせ、3年生の時の私と喧嘩して負けているのだから。まあ、今から考えれば本気ではやってないし手加減されていたのだとわかるのだが。それに、友達の妹相手に本気で喧嘩する方がどうかしてる
「はあ…」
小さく息をついて、私はそいつを無視して坂道を早足に上り始めた
「あ!悠斗居た!!」
「げっ!!」
私が行く方から男子が走ってきて、そいつを追い掛ける。そういえば、悠斗とか言ったっけ。声が煩い。家に着いた私は、さっさと自分の部屋に戻ってベッドに寝転がった。漫画を読んでゴロゴロとしていると、幾分か気持ちも切り替わってすっかり機嫌も直っていた
「安仁絵ー!」
兄の私を呼ぶ声に、ベッドを降りて窓へ向かう。ああ、今思い出しても不愉快でたまらない