大嫌い、大嫌いです。消えてなくなれって思うくらい、そのくらい私は貴方が大嫌いだ
「安仁絵、」
あにえ…ずっと穏やかで平和に、幸せになる様にと付けられた名前、嫌いな名前。幸せなんて、5歳の時に壊れたもん。後ろに振り返り、私の名前を呼んだ目の前の男に私は「何?」と聞いた
「この前の委員会で、お前居なかっただろ?インタビュー、3年3組と3年4組の指揮者と伴奏者になったから」
「…マジ?3年?」
「マジ。ま、ドンマイ」
「ちょ、お前そりゃねーぜ!」
「風邪を引いたお前が悪い」
新聞委員会なんて入らなければ良かった!目の前の男子にかなり文句を言いまくる
「そりゃ無いぜ、ジョニー!」
「誰がジョニーだよ、俺は純粋な日本人だ」
「お前のどこが日本人だよ、精々インド人だろ」
「酷ぇな、テメェ!」
「なんとでも言いやがれ、俺は今無視の居所が悪ぃんだよお!!」
心の中で、ちゃぶ台返しをする。気分はすっかり飲んだくれの父親だぜ
「お前女だろ、俺なんて言ってんじゃねぇよ!」
「うるせぇな。別に良いじゃねぇか、母ちゃん」
「駄目よアナタ!ちゃんと働いてくださいな!いっつも飲んだくれて!!」
言い争ってた男子が声を高くして私の演技に乗ってくる。さしずめ、飲んだくれの夫の代わりに働いている妻ってところだろう。「「じゃなくて!」」…今度はハモった
「なんで、私のインタビュー相手変えてくれなかったのさ!」
「良いじゃん、別に。確かに3年ってだけでインタビューする気も失せるけどよ、もう仕方ねぇからちゃんとやれよ。じゃ!」
「ちょ、待てやゴルァ!!」
「少しくらい女らしくしろよ、テメェ!!」
走り際にツッコミを入れ、去っていく男子。畜生、野球部だから足は速ぇな「はあ…」静かな廊下には、溜息すらも小さく響いた
「しゃーない、行くか」
肩に掛かるバッグはいつも通り重い。廊下を歩く足取りも重い。階段の前に着いた…階段を一段でも下りてしまったら、もう戻れない気がする。一歩進んだら、もう後ろに戻る手立ては無い気がする。畜生
「あー」って、言ってみたら階段に響いた。そりゃそうだ、当たり前のこと。だけど今、自分の声がどこにも響かない気がしたんだ…