everlasting shine



 お前にだけは、いつまでも変わらないでいてほしいと彼は言う。


 聞き取れるか聞き取れないか曖昧な場所から響いてくる声で話す彼は、その話をするときだけはっきりとした口調で乱太郎に語りかけてきた。すごく、真剣な目をして。

「でも、あの……あっ」
「……どうした」
「すみません、私、先輩に対して、でも、なんて」
「……気にしなくて良い」

 つい零れた否定の言葉に慌てて口を覆う。しかし彼は乱太郎を安心させるように、大きな手で頭を撫でてくれた。
 傷だらけの、でも、とても優しい手だった。それと同じくらい優しく、彼は乱太郎が言おうとしたことを尋ねた。

「あの、前に…先輩はおっしゃっていました。変わらないものなど何もないと」
「……ああ、そうだな。…矛盾…しているか」

 そう言うと彼は、そっと乱太郎から手を離した。思わず手の行方を目で追うと、彼は困ったような、寂しげな笑顔で乱太郎を見ていた。

「……お前は、常磐だから」
「えっ?」
「……常磐の緑を持っているから、変わらない気がした」
「ときわ?」

 首を傾げた乱太郎に、彼は、常磐とは常緑樹の葉の色が一年じゅう変わらないこと、転じていつまでも変わらないことを指す言葉なのだと教えてくれた。

「え、でも、緑って…」
「……お前の目は日の下で見ると、緑色に見える」
「ああ、なるほど!確かに常葉樹は一年通して葉が落ちないですものね、その緑…って、中在家先輩、私そんな立派なものじゃないですよ?」
「……乱太郎は、そう思っているのか」

 無意識か、しかしだからこそ、私たちは救われるのだろう。彼が零したその台詞は、乱太郎にはよく理解できなかった。
 それが顔に出たのだろう。彼は再び乱太郎の頭に手を伸ばした。

「……すまない、混乱させたか」
「いえ、あのっ」
「……結局は、私が…乱太郎には変わってほしくないと思っているだけの話だ」
「はぁ…」

 曖昧な言葉しか返せない乱太郎を、彼は優しく見つめる。

 その表情を、乱太郎はきっと一生忘れないだろう。

「……この…闇が支配する世界で、どうか、お前だけは……」

 変わらずに世界を照らしていてくれ。そうすればきっと、私たちはまだ、戻ってくることができるから。


 わがままでしかないと彼は自嘲したけれど、乱太郎は何も言えなかった。

 何も、言えなかった。


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 常磐という言葉を使うのが好きな理由がこれです。乱ちゃんだけには変わらないでほしいと思っていたり、変わらないままでいる乱ちゃんに救われてる周りが乱ちゃんを指して使ってる言葉というか。

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