2011/5/18 小話(綾乱)



・小話二本目です
・綾乱


「綾部先輩って、服を着ると細く見えるけれど実は良い筋肉してるって本当ですか?あと近いです」
「そうなの?自分じゃよく分からないけど」
「えっと、私も兵太夫が言っていたのを聞いただけなので、問い返されても困るんですが…あと近いです、すごく近いです」

 目の前にある緑色の目が困ったように細められた。綺麗な硝子玉の目をもっと見ていたいのに、と喜八郎は乱太郎の顔を捕まえる。すると乱太郎は驚きに目を見開いた。頬が赤く染まったのは、気のせいではないだろう。
 うん、これで綺麗に見える。ひとつ満足げに頷いた喜八郎は、首を傾げるようにして
乱太郎の目を覗き込んだ。そして、八の字眉毛の乱太郎に問いかける。

「見たい?」
「へ?」
「だから、僕の筋肉が見たいんでしょう?」
「だっ、どっ、どうしてそうなるんですか!?」
「おや、違うの」

 そういう振りじゃないの、と喜八郎はその常磐色を見つめるまま、ついっ、と顔を近付けた。

「そ、そんなつもりはなくて、ただ…」
「ただ?」
「ただ…気になった、だけです」

 だって綾部先輩はどう見ても細いのに、実は、だなんて、気になるじゃないですかとそこまで早口で言い切った乱太郎は、喜八郎の視線に耐えられないとばかりに目を伏せてしまう。ああ、目を閉じたら見えないじゃない、と文句を言ってみるが、乱太郎は更に強く目を閉じてしまった。

「じゃあ、こうしよう。乱太郎が気になって夜も眠れない僕の筋肉を見せてあげるから」
「あの、私一言もそんなこと言ってないですよね!?」
「でも気になるんでしょ?見れば一発だよ」
「それは…そうかもしれませんけど…」
「でしょ?その目で確かめれば良い」

 その間に僕は乱太郎の瞳を存分に見つめるから、そう言おうとした喜八郎は、背後から飛んできた重く鋭く暗い殺気に、ちぇっ、と舌打ちをしたのだった。


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 背後から飛んできた殺気の主=仙様 です。
 セクハラ一歩手前にも思えなくない発言である。←



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