2011/5/8 小話(藤内乱)



・小話
・現代パラレル、成長注意
・藤内が眼鏡男子です


「あれ、浦風先輩って目、悪かったんですね」
「あ、ああ、まあな」

 じっと乱太郎に見つめられる。綺麗な緑色の瞳がぱしぱしと瞬いて、まるで夜空に瞬く星のようだと思う。でもちょっと近い気がするんだけど。
 いや、ちょっ、なんで更に近付いてくるんだよ乱太郎!

「いいなーこの眼鏡、格好良いですねえ…」

 近い、近いと距離を取ろうとするけれど、乱太郎は構うことなく近付いてくる。後ろは壁、前には乱太郎。はい逃げられません。
 色々覚悟を決めた俺の前で、乱太郎はぴたりと動きを止めた。ちょっとだけ残念だと思ってしまう。

「私、真ん丸なレンズの眼鏡ばかり掛けてきたので…先輩みたいなお洒落な眼鏡って掛けたことないんですよねえ…」
「あ、え、じゃ、じゃあ、掛けてみるか?」
「良いんですか!?」

 ぱああ、と乱太郎は顔を輝かせる。ああやっぱり可愛い、じゃなくて。俺は自分の眼鏡を外すと乱太郎に手渡した。
 乱太郎も慣れた手つきで眼鏡を外す。その一瞬、僅かに目を伏せた乱太郎の表情に心臓が跳ねる。なんていうか、すごく綺麗だ。

「あ、先輩。私の眼鏡、掛けてみますかー?」
「え、いや、それは…」

 乱太郎の眼鏡を掛けたと知ったら、あいつとか、あの先輩とかに何を言われるか分からない。あ、でも、乱太郎が普段見ている世界を、見るチャンスかもしれない。
 でもやっぱり、数馬と善法寺先輩怖い、と思いっきり動揺していると、乱太郎はこんなダサい眼鏡は嫌ですよね?とちょっと苦笑いをした。慌てて俺は叫ぶ。

「違うっ、そうじゃない!」
「え、あ、はい…?じゃあ、掛けますか?」
「あ、ああ…」

 乱太郎に悲しい顔をさせるのはやっぱり堪えられない。あの二人にばれなければ良いんだと言い聞かせて、俺は乱太郎から眼鏡を受け取る。
 俺の前で乱太郎は、俺が普段掛けてる深緋色のフレームの眼鏡を掛けた。緑色の瞳に映えて、綺麗だった。

「あ、これ結構度、強いですねえ」
「いや、お前…これの方がずっと度がきついじゃないか」
「そうですか?ああでも」

 慣れない視界に勝手に寄る眉間の皺を意識しながら、俺は乱太郎の言葉を待つ。

「浦風先輩が見ている世界は、こんな世界なんですね。なんだか世界を共有できてるみたいで嬉しいです……って、えええ!?浦風先輩どうしたんですか!?」

 なんとか最後の力を振り絞って乱太郎の眼鏡を机の上に置き、撃沈した。
 同じことを考えていたなんて、俺こそ嬉しいなんて、そんなこと、言えるわけなかった。


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 浦風藤内に眼鏡を掛けさせ隊発足記念でした。イエーイ俺得イエーイ




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