2011/5/12 小話(竹乱)



・小話です
・竹乱


「…あの、竹谷先輩」
「ん?どうした、乱太郎」

 乱太郎は、上機嫌で己の頭を撫でてくる男をどうにか見上げて、そんなに撫でないでくださいと呟いた。
 一応相手は先輩なので、あまりきつくは言えないと思っての囁きは、動物並と称される男には十二分に聞き取れるものであったらしく、どうしてだ?と返された。ひとつ、ため息が漏れる。

「あの、こうずっと撫でられていると、なんていうか、……自分が犬猫になったような、心持ちがするんです」
「そうなのか?」

 心から不思議そうに言う彼の手は止まらない。うん、やっぱり犬か猫だと思われている気がすると、以前彼が犬や猫にそうしているところを見かけたのを思い出してもうひとつ、ため息が漏れた。

「犬猫に発情はしねえけどなあ、俺」
「え、そうなんですか」
「…お前は俺をなんだと…そういうことを言う奴にはこうだ!」
「すみません、すみませんって!もう、痛い、痛いですよー!」

 わしゃわしゃと髪をかき混ぜられる。乱暴な手つきだったけれど、でも、乱太郎は分かっている。

(ほんとは、分かってます)

 彼が自分に触れる直前に一瞬だけ躊躇うこと、そして、その大きな手に宿る確かな愛に、気づいている。


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 絵茶にお邪魔した時に書いたものでした。




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