2011/5/6 小話(仙乱)



・小話です
・仙乱


 立花仙蔵というひとは、とても表情の柔らかい人だ。
 細く整った顔立ちの彼が、狐みたいなあの眼を細めると、月が笑ったように思える。冷たい銀色の月ではなくて、そう、それこそきつね色の、月だ。
 思わず見とれていると、彼は少し困った顔をした。薄い唇が開く。

「そんなに見つめられるとさすがに照れるのだがな」
「あ、す、すみません、失礼しました…!」
「いや、気にしなくても良い。そのかわりといってはなんだが、聞かせなさい」
「…なにをですか?」
「私の顔に見とれていた理由をだ」

 にい、と間近で笑う彼に、乱太郎は心臓が跳ねるのを感じた。奇麗だなあ、と思うのと同時に、こんな奇麗なひとが自分と恋仲だなんて信じられなくて、なんだか泣きそうになる。

「乱太郎?」
「…あ、の…、羨ましくて」
「羨ましい?」
「先輩は、月のように奇麗だから、羨ましくなったんです」

 私は、髪もこんなんだし、そばかすだってと言いかけた口を塞がれる。見上げた先で笑う彼は、やっぱり優しく笑って、言った。

「私は日向の色を持つお前こそが、羨ましいというのに」

 そうして降ってきた唇は、とても熱かった。


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 絵茶にお邪魔しながら書いたものです。仙様格好良いよ仙様




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