2014/1/8 小話(藤内乱♀)



・小話です
・現代パラレル藤内乱♀
・年齢逆転、女体化、成長注意


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 それはよく晴れたある日の昼下がりのことであった。
 昼食を早々終えた藤内は次の授業の予習を終え、他にすることもなくぼんやりと中庭を見下ろしていた。昼休み特有の空気の中、中庭は生徒たちでにぎやかだ。昼食を取る者、遊び回る者、休息を取る者、友人との会話を楽しんでいる者、そして移動教室の者。皆一様に表情は明るく、華やかでもあった。
 何の目的もなく、ただなんとなくそんな様子を眺めていた藤内は、ふと、その「色」を見つけた。それは、晴れの日に良く映える茜色だった。高い位置に結った茜色の髪をゆらゆらと風に遊ばせ、のんびり歩いていく、その人。

(猪名寺、先輩!)

 愛しい彼女の愛しい色を見まがうはずなどない。それは確かに乱太郎その人だった。彼女は手に教科書やノート、筆記用具を抱え、友人と楽しそうに話しをしている。どうやら特別教室の集まっている棟の方へ向かっているようだった。

(こっち、見ないかなぁ)

 声を上げて笑っているらしい彼女に対し、藤内はそんなことを思った。藤内と乱太郎は学年がふたつ違うため、校内で出会うことはほとんどない。それでも校舎自体が離れている中等部に比べれば近い位置ではあるが、示し合わすか偶然でもない限り、彼女と行き会うことはできなかった。こうして彼女の姿を見かけることすら珍しい。
 女々しい考えだとは思うが、こっちを見てほしいと思うのも仕方ないことだろう。教室にいるクラスメイトたちに怪しまれないよう、そっと窓に寄る。こうすれば見つけてもらいやすくなるのではないかという浅はかな考えが藤内を動かした。

(でも、まぁ……無理か)

 そう、問題は藤内がいる教室は三階にあるということだった。ここから叫んで気づいてもらうならまだしも、窓に寄る程度で気づいてもらえるとは思えなかった。
 ため息がひとつ漏れる。俺は何をやっているんだと、そっと戻ろうとした、ときだった。

(――!)

 乱太郎が、不意に視線を上げた。そしてその常磐色は藤内のいる三階、更に言えば、藤内自身を射抜いた。目が、合う。どきっと心臓が跳ねる。
 気づいてほしいと思っていたのに、いざ視線が合うとどうしていいか分からなくなってしまって、藤内は固まるしかなかった。中庭からこちらを見上げる乱太郎はひとつ驚いたような顔をした。だが、すぐにふにゃりと表情をとろけさせた。そうして、小さく小さく、藤内に向けて手を振った。

(わ、わっ…!)


その様子は非常にかわいらしくて、彼女が自分に手を振ってくれていることが嬉しくて、藤内は思わず身を乗り出すようにして手を振り返した。乱太郎はそんな藤内の様子ににっこり笑ってみせると、もうひとつだけ手を振って友人たちと去っていった。
 藤内はその後ろ姿が校舎の中へ吸い込まれていくところまで見届けると、ゆっくり席へ戻った。自然と顔が緩む。

(あー…やっぱり猪名寺先輩はかわいいな…)

 乱太郎が自分に気づいてくれた偶然と自分へ手を振ってくれたことににやつく顔を手の平で隠しながら浸っている藤内は気づかなかった。
 教室の端から一部始終を見ていた数馬が、それはもう恐ろしい絶対零度の無表情で藤内を睨みつけていることに。


【Find me!/藤内乱♀】




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