2013/9/21 小話(三は乱♀)



・小話です
・三は執事と乱お嬢さま(ごさい)な現代パラレル
・現代パラレル、成長、女体化、ロリ化、猪名寺家がお金持ち設定です。苦手な方は気をつけてね!
・乱様が可愛すぎて生きるのが楽しい三は執事


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「乱様は天使だ。空から落ちてきたんだ。だってそうとしか考えられない」
 真面目な顔でそう言った数馬を、藤内は呆れながら見つめた。何を言っているんだこいつは、と言いたげな表情だったが、数馬が引くことはなかった。でも決して堕天使ではなくて、ただ落っこちてしまっただけなんだろうなと頷いている。
 藤内の腕の中には乱がいた。数馬と藤内に囲まれて、すよすよと安らかな寝息を立てている。時折その可愛らしい口から発せられる寝言から、彼女が夢の中、花畑で走り回っているらしいことがわかった。乱が「ちょうちょさん、まってー」とつぶやいた一瞬、藤内の顔は綻んだ。
 乱を抱え直しながら、藤内は咳ばらいをしつつ表情を引き締めた。藤内と似た緩い笑顔で乱を見つめている数馬に向かって、少々硬い声で言う。
「お前は何を言っているんだ、数馬」
 理解できない、と付け足す。ため息混じりの言葉に数馬の眉が跳ねた。否定するのかと言いたげな目を真正面から受け止める。そして藤内は、お前はわかっていないなとつぶやいた。
「乱様は天使なんかじゃない」
「なん……だと……?」
「天使ではなく、乱様は女神の化身だ。女神となるべく少女時代を過ごしていらっしゃるわけだな」
 あえて言おう。藤内はそれはもう、真剣であった。なんだか色々と残念になるくらい、真剣であった。真面目に、心の底から、そう思っている。冗談でもなければ、偽りでもない。それが真実であるということを疑う素振りすら見せない。

 そう、彼は馬鹿だった。乱様馬鹿、だったのである。今更ではあるが。

 そんな藤内の言葉に、もう一人の乱様馬鹿であるところの数馬はううむと腕を組んだ。やはりこちらも真剣そのものである。
「いや、やっぱり天使だよ。羽根が生えたかのように走り回られるし、とても愛らしいし」
「いいや、女神だ。乱様の笑顔はこのお歳にして慈愛に満ちているじゃないか。それに愛らしいし」
「いやいや天使だ。僕たちに幸せを運んでくれる天使だ」
「いやいやいや女神だ。ちょっとドジっ子なところもある女神だ」
「だから天使だって」
「ちがうって女神だって」
 どっちも変わらないだろ!というツッコミをする人間はその場にはいなかった。もしも乱の兄である勘右衛門や留三郎がいたならば、的確なツッコミを入れてくれたに違いない。お前らは乱(様)のことが好きすぎるな!なんなんだ!馬鹿か!そうだ馬鹿だった!こいつらただの馬鹿だった!と。
 ツッコミもいない止めるものもない二人の論戦は、果てなく続く。それは乱が目を覚まし、「らん、てんしよりねー、めがみさまよりねー、おひめさまがいいのー」と馬鹿……失礼、執事二人の考えを全否定するまで、激化の一途を辿るのであった。

 ちなみに。
 この「乱様は天使だ女神だ論戦」は、執事二人だけでなく、猪名寺屋敷に働くすべての使用人たちへと飛び火した。
 そして、天使だ女神だ妖精だお姫様だ子猫だ子狸だなんだかんだと激論を交わす使用人たちを遠い目で見やる勘右衛門の姿が見られたという。

(ああ……この屋敷は乱馬鹿しかいないのか……)
(しかし、お前らはみんなして乱馬鹿なのかとか言ったら「乱様は馬鹿じゃないです!」とか言われそうだなー……)
(まぁ乱は確かにかわいいけどな……ちょっと度が過ぎているというか……なんていうか……宗教じみてる?……みたいな……いや、やめよう……深く考えるのはやめよう……)
 勘右衛門、がんばれ。もし、神様というものが存在していたら、そんなことを言ってくれたかもしれない。

 そんな約一名の精神的負荷はあるものの、猪名寺屋敷は今日も平和なのであった。


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 乱様が愛らしすぎて生きるのが楽しい皆さんの話でした。みんな真剣に乱様は天使だ女神だなんだかんだと考えてる辺り、とても怖いですね!




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