2013/9/15 小話(乱受け)



・ついった小話まとめ
・女体化も成長も転生前も転生後もえろっぽいのもなんでもありだよ!
・平太乱♀×2、藤内乱♀、平太乱♀←伏×2、さこ乱♀←ろじ




・平太乱♀

 繰り返される口づけに、身体が燃え上がる。血という血、骨に肉、髪の毛先から爪先、細胞のひとつひとつに至るまで、すべてが熱さに支配されていた。
 その熱に膝が、くらりと揺れる。沈む、と思った瞬間、彼の腕が乱太郎を受け止めた。絡み付くように求めてきた彼の唇が離れていく。視界いっぱいにある彼の端正な顔は熱を宿していて、ああ、平太はこんな顔もするんだと彼女はぼんやりする頭の端で思った。
「……たりない」
 乱太郎が、たりない。小さく、彼が囁く。掠れて色を帯びたその声に、乱太郎は身体を震わせた。その中に確かな喜びが混じっていることを、感じていた。

【「たりない。」】


・平太乱♀(転生前)

 きっと、きっと。生まれ変わっても俺はきみを見つけて、きみと恋をして、きみを幸せにしてみせるから。そう言って彼は笑った。
 そうだね、私も見つけてみせるから。だから、今度も幸せになろうね。たくさんたくさん、幸せにしてあげる。乱太郎もそう言って笑った。
 そうして目を閉じた乱太郎を、彼はそっと抱きしめて、その大きな背中を震わせた。

【たくさんたくさん、笑っていようね】


・藤内乱♀

「はい、小指出してください!」
 眉を釣り上げた乱太郎が言う。ああこれはかなり怒らせてしまったのだと焦っていると、乱太郎が小指を出せと繰り返した。
「は、はい!わかりました!」
 思わず丁寧語で帰せば、乱太郎は藤内の小指に小さなそれを絡ませて、誓ってくださいと掠れた声で言った。
「これからは絶対にいらぬ怪我をこさえたりしないって、約束してください!」
 ああ、これは。心配をかけてしまったのだと思った。馬鹿なことをしてしまったと、泣き出しそうな乱太郎を抱き寄せる。囁いた謝罪の言葉に、彼女は小さく頷いた。

【「やくそく。」】


・平太乱♀←伏(転生後)

 間に少しくすぐったくなるような距離を取って、帰ってゆく二人を彼は見守っていた。
 多分、今回も乱太郎は平太を選ぶのだろう。ずっとずっと昔と同じように、夫婦になるのだろう。そうして幸せな家庭を築いて、幸せだったと笑って生涯を終えるのだろう。それはきっと、いや、確実に来る未来だ。
 本当は、僕が彼女を幸せにしたかったと、すでに見えなくなった彼女の後ろ姿を思った。誰よりも愛しくて仕方ない女の子。けれど、その想いは今回も実ることはなく、セピア色の優しい想い出へ昇華する。
 それでいい。彼女が幸せならいいと思えるのはもう少し先だろうけれど。それでもいつか、二人の幸せを願える日は来るだろう。
 ひゅるりと鳴いた風が彼の足元をさらっていった。

【ループしていた想いとは】


・平太乱♀←伏

 きっと、それは今が夏だからに違いない。
 乱太郎はこの世の幸せという幸せを集めて煮詰めたような、甘くはじける笑みを浮かべていた。真っ白なドレスを身にまとって、伴侶となる男の隣で、そうやって笑っていた。
(ひまわりみたいだ)
 そう思ったのは、彼女が手にするブーケにそれらしき花があったからでもあるだろう。式が夏だったからというのもあるだろう。
 だから、彼の中にわだかまっている思いは。自分が彼女の太陽であれたならば、今彼女の隣にあるのは自分だったかもしれないという思いは、きっと、夏の幻だ。

【ひまわりのように笑って/平太乱♀←伏】


・さこ乱♀←ろじ

(おめでとう。)
 その、たった五文字の言葉が口から出ない。代わりに飛び出すのはいつも通りの言葉たちだ。お前みたいな跳ねっ返りが嫁に行けるなんて嘘みたいだな、せいぜい離縁されないように気をつけろよ。
 すると彼女は眉を釣り上げて、睨みつけてくる。それも、いつも通り。その顔はなんだと、口を開きかけた時、ため息混じりの声が聞こえた。
「三郎次。あんまり人の嫁さんをいじめてくれるな」
 振り返る先にいたのは、乱太郎の伴侶となる男だった。彼の登場に乱太郎の顔が明るく輝く。気配でわかった。
 ああ、そうか。お前は幸せなんだな。すとん、とそんな考えが降りてくる。俺がお前に言えなかったあの五文字の言葉を、こいつはお前に言ったんだろう。俺が、口に出すのを恐れたあの言葉を。
(あいしてる、なんて。)
 言えたところで何も変わりはしなかっただろうと思ってしまうのは、負け惜しみに違いない。式が始まる、と並んで去っていく二人を見送りながら、結局ふたりには伝えられなかったその五文字の言葉を、小さくつぶやいた。

【「おめでとう。」さこ乱♀←ろじ】






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