2013/8/23 小話(乱受け/途中まで)



・女体化、年齢逆転注意
・途中で終わります
・途中で終わります


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 何がどうしてそうなったかと説明を求められたならば、誰に尋ねてもこう言うだろう。「いつもの学園長の思いつきです」と。
 まあつまりはそんな事情があって、忍術学園は本日、流しそうめん大会が開かれることとなったのである。何故かは問うてはならない。学園長の思いつきに、理由などは特にないからだ。

 夏休みが始まる三日前、突如学園に走った大会開催のお知らせは、用具委員会と某教科担当教諭に悲鳴を上げさせた。前者はそうめんを流す台の作成を一日で行えと命じられ、後者はいつもの理由で悲鳴を上げたわけだが、一度これと決めた学園長が意見を曲げるわけがないと泣く泣く文句を言うのを諦めた。
 それに、学園のマドンナともいえる保健委員長がこう言ったのだ。流しそうめんか、楽しみだねぇ、と。夏の暑さも吹き飛ぶその可憐な笑みを見て、やる気にならない生徒は用具委員会にも、他の委員会にもいなかった。彼女にすこぶる甘く弱い会計委員長と副委員長はすぐさま流しそうめんに関する費用を計上し、体育委員会は流しそうめんに使用する竹の切り出しに走り、生物委員会は用具委員会と協力して流しそうめん台の製作に当たり、作法委員会は流しそうめんの作法もとい手順を確認、生徒たちに通達し、図書委員会は保健委員会と共に主役であるそうめんと薬味、つゆなどの準備に走り回った。
 その連携の取れたチームワークに、みんな流しそうめんが楽しみなんだねと彼女は嬉しそうに語ったという。己の一言が、その原動力になったとは気づいていないようだった。そんな彼女の隣で薬味のネギを刻みながら、保健副委員長であるところの鶴町伏木蔵はこう思った。この子の親友もそうだけれど、この子自身もひとを動かす天才だなあと。そこにある彼らの感情は、全く違うものだけれど。



 さて、そのまま大人しく流しそうめんを楽しませてくれないのが忍術学園の学園長というひとで、彼はこんなことを言い出したのである。
「流しそうめんの台に並ぶ順番は、委員会ごとにくじで決めることとする!」
 これに悲鳴を上げたのは保健委員会の面々だった。くじで決めたりなんかしたら、確実に彼ら保健委員は端の端に追いやられることになる。目に見えた未来だ。そうなれば食べ盛り大食漢の多いこの学園のこと、保健委員のところにそうめんは確実に流れてこない。こないに決まっている。
 だがやはり学園長は譲らなかった。何を考えてくじで決めるなんて言い出したんだと皆がその発想に首を傾げたが、やはり皆最後には諦めて彼の言う通りにすることとなった。何度も言うが、彼に何を言っても無駄だと分かっていたためである。

 そんなこんなで、学園長の宣言から一日と半分が過ぎた頃、流しそうめん大会の幕が切って落とされた。




 一言で言うなら、戦争であった。
 そうめんを流し始める場所に一番近い位置を手に入れた体育委員会と生物委員会は、遠慮を何処かに忘れてきたかのようにとにかく食べまくっていた。特に体育委員の小平太と生物委員の八左ヱ門は、そうめん台と己の胃袋を直結させたかのような食べっぷりを見せている。
「おい!小平太!少しは遠慮しろよ!」
「八左ヱ門、お前もだ!」
 体育生物両委員会の後ろに構える用具委員の留三郎と学級委員長の勘右衛門が叫ぶ。だが二人は、何を言ってるんだお前らと言いたげな目を向けた。
「何言ってるんだ、これはサバイバル流しそうめんだぞ?」
「つまり遠慮は無用ってことだろ?」
「勝手にサバイバル付け足すなー!!」
「遠慮無用にも程があるだろー!!」
 ふざけんなー!と留三郎と勘右衛門以外のメンバーも声を上げる。彼らの後方に待つ会計委員会や作法委員会からも同様の叫びが上がった。
 それらの声にも小平太と八左ヱ門は気にする様子を見せなかったのだが、不意に、彼らの前に立つ者があった。
「……小平太」
「金吾先輩?四郎兵衛先輩も……なんだ?」
「いいか、お前が腹を空かせているのはよく分かっていた。だから何も言わなかったが……いい加減にしておけ」
「でもまだ腹六分くらいで……いてっ!」
「阿呆!お前が食い過ぎたら保健委員会までそうめんが行かないだろうが!」
「あ」
 焦った様子の滝夜叉丸に拳骨を食らった小平太は、ようやく気づいたという顔をした。遥か遠くの保健委員たちを見れば、彼らは文句こそ言っていないが、とても遠い目をしている。
「分かったな?乱太郎に流しそうめんを楽しませてやりたいなら、少し遠慮しろ」
「少し?」
「……いや、かなり遠慮しろ。かなりだ」
「はーい」
「八左ヱ門も良いな?」
「はい、分かりました佐武先輩」
「まあ、あえて乱太郎のところまで流させずに涙目になった乱太郎を見て楽しむっていうのもアリだけどねえ」
「三治郎……頼む。お前は黙っていてくれ……」
 にこにこと恐ろしいことを言う同輩に、金吾と虎若はため息を吐き、一平は三治郎の頭をひとつ叩いた。

 さて、小平太と八左ヱ門が遠慮スキルをやっとこさ発動させたことにより、少し先までそうめんが流れるようになった。
 忍術学園の胃袋と称されるしんべヱ率いる用具委員会へそうめんが行くことに若干の心配の声も上がったが、なんと驚くことに、彼は「僕はまだいいよ」と微笑んだのである。福富先輩が食べ物に関して遠慮しただと!?天変地異の前触れか!?とざわり揺れる他の委員会たちを尻目に、彼は留三郎の背中をぽん、と押した。
「ほら、たくさん食べておいで」
「作兵衛も……行ってくるといい」
「え、ですが……」
 留三郎と、用具委員長である平太に背中を押された作兵衛はひとつ顔を見合わせ、再び先輩二人へと視線を戻す。二人が優しく微笑むのを見て、留三郎と作兵衛は分かりましたありがとうございますと頭を下げ、箸と竹で作った小鉢を手にそうめん台へと向かった。その様子を、平太としんべヱ、そして喜三太は微笑ましげに見送る。
 先輩と後輩の仲のよさがうかがえるエピソードであった。

 一方、こちらは学級委員長委員会である。はっきり言って、こちらは戦争だった。
「鉢屋」
「なんですか黒木先輩」
「お前は一体どこに行こうとしている?」
「愚問ですね!」
「そうだな、愚問だったな」
 器にすくったそうめんを山盛りにした三郎と、そんな三郎の首根っこをつまみ上げた庄左ヱ門が睨み合いをしていたのである。




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 夏が終わってしまいそうなのでとりあえずこちらへ。続きが書けたらメインページに更新します。
 あの時代にそうめんがあるのかないのかについては調べてません!←
 フィクションということでひとつご勘弁ください……




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