2012/10/20 小話小ネタ(乱受け)
・ついったに流したSSSまとめ
・小話も小ネタもごった煮
・藤内乱、金吾乱、鉢乱、勘乱
・藤内乱
「藤内先輩のばかー!」
「なっ…!ばかって言った方がばかなんだぞ!」
「ふぇええ…っ」
「(な、泣かしてしまった!)ら、乱太郎…っ」
「…っく…藤内先輩の…藤内先輩のばかー!きらいー!!」
「(ズガーン!!)」
「藤内が死んだーッ!!」
【私的辛め藤内乱】
・金吾乱
「はい!」
ぽふぽふと正座した己の膝を叩く乱太郎を、金吾は呆然と見つめる。乱太郎の行動が意味するところを理解できないわけではなかったが、突然何を言い出すのだろうと身体も口も頭も働かなかったのだ。えーっと?ととりあえず首を傾げてみる。だが乱太郎は何も答えずにただぽふぽふと膝を叩くばかり。さらに、「金吾に膝枕をする権利を与えよう!」などと言うのでますます混乱してしまう。
「えっと…気持ちは有り難いけどさすがにこの年になって膝枕してもらうのはちょっと…」
「だめだよ、金吾」
ちっちっち、と人差し指を立てた乱太郎は、眩しい笑顔を向けてくる。
「この膝枕には、『私が金吾に膝枕をしてあげる権利』も含まれているからね」
権利放棄はすなわち私の権利侵害だよと笑う乱太郎に、金吾は苦笑するしかなかった。「だったら、してもらう以外に道はないね」と零しながら。
【膝枕をする権利を与えよう!/金吾乱】
・鉢乱
「鉢屋先輩はどれが本物なんですか?『僕』の先輩?それとも『私』の先輩が本物ですか?」
「さあ、どう思う?」
にこりと微笑んでやりながら、三郎は内心失望していた。そんなの、もうどうでもいいことじゃないか。三郎のことを少し知れば誰でも一度は口にする疑問。三郎はいつも同じように返していた。「さあ、どうでしょう」と。
大抵はお前は自分がない奴だと罵るか、お前は難儀な性格だと決め付けるか、人をからかうのがそんなに楽しいかと呆れるかどれかだった。誰も見ようとはしなかった。
「はい、分かりました!」
思考に沈んでいた三郎の耳に明るい声が届いた。目を遣れば乱太郎が元気よく手を挙げている。
「はい、では乱太郎」
先生がするように指名してやった。まあ、あいつらよりは愛らしい答えが出るだろう。稚拙で、毒にも薬にもならぬ戯れのような言葉が。
「はい、全部が先輩です!」
「え」
「『僕』も『私』も『俺』も、それが鉢屋先輩である限り、全てが先輩です」
期待などとうに枯れ果てていた。周りは三郎の一面しか見なかった。別の自分を演じれば気付いてもらえると、そう、最初は信じていて。いつしかその答えを自分でも失ったのだ。
「違いましたか…?」
綺麗な目が三郎を射る。本人は感じたことをただ口にしただけだろう。深い意味はないと分かってはいて、涙が出そうになった。周りが決め付けるならと自分で手放し、失った「自分」を持っていた乱太郎を、どうしようもなく抱きしめたくなった。
【missing,miss link】
・勘乱
乱太郎はいい子だ。
「え!?また鉢屋先輩がそんなことしたんですか!」
「久々知先輩ったら、懲りずに尾浜先輩を困らせてぇ〜!」
「もう!生物委員会はしばらく治療してあげません!」
そうやってひとしきり俺の代わりに怒ってくれる。そして最後には決まって「だから尾浜先輩、元気を出してくださいね」と言う。よしよしと精一杯手を伸ばして、頭を撫でてくれる。
ああ、そんな愛し子に、いつ切り出そうか。君に慰められたくて、撫でてほしくて堪らないから、落ち込んだ振りをしている、ということを。
prev | next