2011/7/5 小話(富乱♀)



・小話です
・富乱♀
・女体化、現代パラレル、年齢逆転、成長注意
・富松作兵衛くんは登場しません




 ベイビーブルーのカーテンから朝の陽射しが差し込んでくる。普段、授業があるときはただ眩しく感じるだけのそれが今日は気持ち良くて、私はぱちりと目を開けた。
 ベッドサイドに置いておいた眼鏡をかけて、赤い目覚まし時計を確認。予定より10分以上も早く起きてしまったことに驚きながらアラームを解除した。
 ひとつ伸びと欠伸をしてベッドを出る。カーテンを開けるとそこには青色の水彩絵の具を綺麗に水で伸ばしたような空があった。うん、天気予報のお姉さんが言った通りの快晴だ。
 空を行く鳥たちの声に耳を傾けながら、私もなんだか歌い出したい気持ちにかられた。お隣りさんにうるさいって言われちゃいそうだから、しなかったけどね。

 そんな朝から浮かれる私は今日、彼氏とデートなのです。


 顔を洗って歯を磨いて、朝食をとってと毎日繰り返している行動を、自分でもそわそわ落ち着かない気分でこなしていく。鏡を見たらきっとにやにやと頬が緩んじゃってるんだろうな。うん、でも仕方ないと思うんだよね。だって、久しぶりに会えるんだもん。

 この春、大学に進学する私の恋人は、お察しの通りずっと受験で忙しくて、去年はなかなか会える時間が取れなかった。私が通う大学と彼が通っていた高校は違う町にあるから、そういう意味でもなかなか会えなかったんだ。
 受験が本格化してからは、片手の指で足りてしまうかもしれないくらいしか会えていない。メールや電話は毎日のようにしていたんだけど、彼の邪魔にならないようにと、抑えて抑えて、のやり取りをしていた。
 そして彼は無事に大学に合格して、春から私と同じ大学に通うことになった。今も入学手続きやアパートの契約、新入生説明会などなどで忙しい日々を送っているんだけど、今日は久々に時間ができたということでの、デートなのです。…て、照れるなあ。


 昨日の夜、クローゼットにかけておいたワンピースに袖を通す。膝の辺りでひらひら裾が揺れるそのシフォンのワンピースは、私が着るには可愛すぎる気がするんだけど、一緒に買い物してたユキちゃんトモミちゃんに似合ってる!ってお墨付きをもらえたから、きっと大丈夫と自分に言い聞かせた。
 細身の七分丈のジーンズを身につけて、ワンピースの隣にかけておいた丈の短いジャケットを手に取る。姿見でおかしくないか確認しながら、可愛いと思ってもらえますように、なんて、祈った。

 いつもより気合いを入れて(でも濃くならないように気をつけながら)お化粧をして、ふわふわしてお手入れに苦労する髪をシンプルなシュシュでまとめて。もう一度変なところはないか姿見や鏡で念入りにチェックしていたらあっという間に部屋を出なければいけない時間になってしまった。
 慌てて、お気に入りのポシェットの中身を一通り確認して、部屋の鍵と車の鍵を手に部屋を飛び出した。


「えっと…ルームミラーよーし、サイドミラーよーし、シートベルトもオッケー、と」

 今日は遠出だから指差し確認しながらしっかり車内を確認する。
 タイヤやエンジンのチェックはちょっと自分でやる自信がなかったから、たまたま昨日遊びに来てくれた友達にお願いしてやってもらったんだけど…「もしかして、明日デート?」って聞かれて、素直にそうだよって答えたのに、彼はなんでちょっと泣きそうな顔をしていたんだろう。
 そんなことを考えつつ、私はキーを回した。これから迎えに行く…えと、彼氏、の、作兵衛から借りたままのCDを読み込ませて、ハンドルに手を置いて深呼吸。

「安全運転、安全運転っ」

 自分に言い聞かせながら、私は車を発進させる。早く会いたいな、なんて逸る気持ちと、久しぶりに会えるの嬉しいな、なんてふわふわしてしまう心を頑張って宥めながら、アクセルをゆっくり踏み込んだ。


(目的地は、)

 君の一丁目一番!


_ _ _ _ _

 大好きな曲をテーマに書いていたのですが、歌詞そのまますぎてセルフボツにしたもの。ここに出したのは、そうです勿体ない精神です!←



prev | next



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -