2011/7/2 小話(長乱)
・小話です
・長乱
言葉は時に稚拙で、意味のないものになる。思いを伝えるには必要不可欠なものだけれど、過ぎれば人を傷付けるし、思いを歪めてしまうことにもなりかねない。
内に渦巻く思いを言葉で正しく表現することは、とても難しいことだ。いや、そんなことはできないと言えるのではないだろうか。
どんなに正確に表現しようとしても、口から出た瞬間に、色を変えてしまうのだ。淡く、微かに。
もし、自分の頭の中にある淡い黄色をした暖かさとか、心の中にある愛しさとか、そういうものを見せることができたら話は早いのだけれど、残念ながら人間の体にそうした機能は備わっていない。
目の前で真っ赤になって視線をさ迷わせるその子に目を落としながら、役に立たぬ唇も頭も捨てたとして、さあどうすればこの子に伝えることができるだろうかと、長次は思った。
【今ここで抱きしめたい/長乱】
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