2011/6/10 小話(乱受け)



・小話です
・よく分からない転生ネタ
・乱太郎が…していますのでご注意ください
・誰か→乱


 小さい頃から雨が嫌いだった。外で遊べないからとか、濡れるのが嫌だとか、髪が纏まらないとかそんな理由より先に、嫌いだと感じる心がそこにあった。ただ、なんとなくだけれど、雨が嫌いだった。雨は何も洗い流してはくれないと彼は知っていた。熱を奪うだけだと、彼は知っていた。

 忘れられないひとつの記憶がある。冷たい雨の下、胸の中に誰かを抱いている、ただそれだけの記憶だ。時折夢にも見るその記憶は、決まって悲劇で終わった。忘れられない記憶と言ったけれど、記憶の端々に見られる風景や空の色、匂いも自分が抱くその人も、すべて知らないものだった。

 約束をするということは、それを果たさなければならないということだ。果たされない約束は約束とは言えない。それはただ自分を慰めるための気休めでしかない。約束を守り続ける彼は、いつかこの約束を果たさなければならないと思っている。誰と交わしたどんな約束なのか、思い出せぬまま、ただ、ひたすらに。

 冷たい雨の記憶の中には、ひとつだけ温かいものがあった。それはかき抱く細い身体でも、その顔に浮かぶ微笑みでもない。大嫌いな雨の記憶の中で唯一のそれは。

(約束ですよ)

 小さな小さな、呟き。どんな約束なのか、誰との約束なのか、思い出せないけれど、その約束を持っていればいつか、きっと。

 きっと、今度こそは。


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お題【雨、記憶、約束】



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