2011/5/27 小話(平太乱)



・小話です
・平太乱
・成長注意


 じっ、とその横顔を見つめてみる。用具の管理に必要な一覧をチェックしている彼は、最初は真剣な顔をしていたけれど、次第に眉が八の字になっていく。それを見て乱太郎はこっそり微笑む。

(困ってる困ってる)

 乱太郎は、彼が何に対して困っているのかを知っている。彼が今手にしている一覧に不備があるからとか、もうすぐ委員会が始まる時間だから焦っているとか、そういうことじゃないと乱太郎は知っている。
 一瞬、彼が乱太郎に視線を投げた。かちあう視線に、乱太郎はにっこり微笑んでみせる。すると彼はひとつ困ったように笑って、すぐに作業に戻ってしまった。乱太郎は、彼の耳が赤いのを発見してくすり、と笑った。

(可愛いなあ)

 それは六年生の男子には相応しくない形容かもしれないけれど、そう思ってしまうのだから仕方ない。可愛いと自分に思わせる彼が悪いのだと心の中だけで頷きながら、乱太郎は机に頬杖をついた。
 顔がにやけてしまうのを隠すため、口許に手をやりながら、乱太郎は彼の観察を続ける。彼の八の字眉毛は更に角度を深くしていた。手が挙動不審に見えるのは乱太郎の勘違いではないだろう。
 彼からちらちらと寄越される視線に、そろそろかなあと思っていると、彼は手にしていた紙の束をまとめて、ひとつため息をついた。

「終わった?」
「終わった、というか、終わらせた。それどころじゃないよ、もう」
「えー、駄目じゃない用具委員長。真面目にやらないとー」
「大丈夫、確認は昨日もしたし」
「備えあれば嬉しいなという言葉があってだね」
「それを言うなら、備えあれば憂いなし、ね。…いいんだ、今は、こっちの方が大事だから」

 そう言うと、彼はまっすぐ机に向かっていた体を隣に座っていた乱太郎の方へ向けた。乱太郎は首を傾げてみせる。すると彼は困ったように微笑むと、両手を広げた。

「はい、おいで」
「えー?なになに?どういうことー?」
「…そういうつもりで見つめてたんでしょ?」
「ばれたか」
「いやいやいや、気付かない方がおかしいと思う」
「そう?じゃあ今度伏木蔵にもやってみて、」
「……」
「!」

 突然、彼に引き寄せられた。耳元で駄目だよ、と囁かれる。どきっと心臓が跳ねて、笑顔が引っ込んでしまった。代わりに、顔が熱くなる。

「浮気、駄目、絶対」
「ど、どうしてそれが浮気になるの。伏木蔵はただの友達だよ」
「…俺がおもしろくない」

 寂しい思いをさせてたならいくらでも謝るから、どれだけでも抱き締めるから、そう呟く彼に、ぎゅう、と抱き締められる。

「…恥ずかしいよ、平太」

 ああ、多分今、自分はすごく赤い顔をしてるんだろうなあ、そんなことを思いながら乱太郎はその広い背中に手を伸ばした。


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 成長した平太の一人称は「俺」が良いなあとかそんなことを言いたかったお話です。

 そのうちに小話もまとめないとですねえ…



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