第一話
その男、生み出すのは破壊。
_____________________________________________















静雄は激怒した。















ガラガラガラガラ、ガランガラン、

コンクリートとへしゃげた道路標識の擦れ合う音。彼は今、怒りでまともな思考回路をしていない。





「……………ろす。ころす、ころすころす殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すッ!」







彼はこの街、池袋では有名な人物であった。平和島静雄。この名を知らないというならさぞかしそれはおのぼりであろう。バーテン、青みがかったグラサン、金髪。それが彼のスタイルであった。

ついでに言うとこの呪文じみた言葉を繰り返し呟くとき、それは大抵ある人物に向けてだ。








「殺す、ブッ殺す、メラッと殺す、叩き潰してすり潰して、ンで殺すッ!」










人は静雄を避けて通る。出来るだけ目立たないように、目に付かないように、それこそいらぬ火の粉、触らぬ神に祟りなし、だ。

ビルの上からその周囲を見ればまるで瞳の形にも見えるかもしれない。瞳が静雄、そして避けて通る群衆が目の枠。いや、そうでもないか。とにかく、それ程静雄の周りは空間が広がっているがしかし、




_________そんなこと、どうだっていい。

周りの視線?ンなこと知るか。俺は無性に、ああ、そうだ。無性に腹立たしくてならねェ…ッ







静雄はそれどころではなかった…。周りの目を気にするほどの余裕もなければ、もともとこういった他人からの視線は慣れている。いえば日常的にすぎない。ただ、今、頭の中にあるのはひとつの思考だけ。

頭の先からつま先にかけてまで押し寄せてくる怒りの波。流れる血流がいつにも増して速く、そして熱い。怒りのあまり笑えるほど口元はつり上がる。

大股でヅカヅカと、確か道路標識は持っていたというのに、しかも片手でだ。普通の成人男性なら涼しい面のまま、アレを片手で引きずることはまず無理な話だ。

静雄は身長はあるが、どちらかと言えば細身だ。しかしどこからそんな馬力が出るのか、不思議に思うだろう。身体の構造から考えても実に論理的ではない。

では何故?

それは、彼が、平和島静雄という男が特別だからだ。理解が出来ない?確かに。けれど、それが全てなのだ。静雄の身体は持って生まれた特異体質。強靭的かつ凶器的な恐ろしほど壊れない肉体を持っている。

多分、身体の中にある染色体の異常なのかもしれない。

人を持ち上げるのはおろか、今手にしている車両通行禁止の道路標識、自販機、車、案内標識、公共物をまるでコンビニで売っている品物を手に取るように扱う。

スケールのデカさにどれほどの怪力の持ち主なのか逆に分からなくなるほどのそんな彼を今、腹立たせ、殺害予定を受けている人物がこの世にいた。静雄はその人物を、音を響かせながら、着実に、勘を頼りに近づいていた。





__________________瞬間、










「あ、ヤバ」








手前の道で横切ろうとするその人物が静雄の視界に飛び込んできた。

一瞬、同時に目を見開く二人。
そして今まで溜め込んでいた熱が一気に上昇し、道路標識がやっとここで使われることとなる。

目の前に向かって、少し後ろに仰け反り、力を溜め込んで……










「……………見つけたぜ。イィィザァァヤァァァァァァァァ」












ドゴシャァァアァァァァァアア……………ン…














投げ槍の如くその人物めがけ、一直線、躊躇もなく、一気に振り投げた。



















[ 1/2 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -