はじめもさいごも君がいい




「なまえー疲れたー」

「っ!クロ、危ないんだけど。しかもなんか冷たいんだけど!」

「俺の爽やかな汗ですね」

「汚い」


梟谷学園グループの合宿中。
もうすぐ夕飯の時間。
マネージャーが総出でご飯作りをしていたところにクロが登場。
そして私に後ろから抱きつき危うく指を切るかと思った。


「やだーなまえと黒尾ラブラブじゃん」

「見せつけちゃって」

「見せつけてないから!クロ、もう離れてよ」

「やだねー」

マネージャー達はニヤニヤしてるし、やっちゃんは固まってるし、クロは離れないし…。なにこれ。


「黒尾、ほんとになまえのこと好きだね」

「おー、好き」


「いつもそんな感じなの?」

「まーこんなもん」


「へーいいねー」

「だろ」


「いつから好きなの?」

「保育園通ってた時から」

「え!?長くない!?あ、幼馴染なのか」

「そーそー」



……ちょっと…めっちゃ恥ずかしいんだけど。
クロってばいつもは絶対そんなこと言わないくせに。
マネージャー達は、楽しくなって色々クロに質問してるし、クロは真面目に答えてるし…。

「初キスはー?」

「えー…」

「もう、クロこっちきて!」

答えを言われる前に、私の首に回された手首を掴んで食堂から連れ出す。
マネージャー達のひやかしの声は聞こえなかったことにする。



「もう恥ずかしいんだけど!」

「お前顔真っ赤」

「誰のせいよ」

馬鹿にしたように笑うクロの頭を叩けば、その腕を掴まれて、胸へと引き寄せられて、正面からぎゅっと抱きつかれた。
クロの匂いに包まれて、私は思わず背中に手を回す。


「はーーやっと二人になれたなー」

私の肩に顔を置いて、本当に幸せそうにそう言うものだから、やっと冷えた顔がまた熱くなる。

「まさかさっきのあの恥ずかしいやりとりは、このため?」

「なまえがあのまま我慢できるとは思えなかったしな」

「ほんと、クロ性格悪い」

「どーも」

「褒めてない」

でも、とクロは続ける。

「初キスの日なんて、他の奴には教えねーよ」

そう言って腕を少し解くと、私に優しいキスを一つ。

「…覚えてんの?」

「さーな」


意地悪に笑って、クロは私の髪をくしゃくしゃにして、体育館へと戻っていった。


クロに、

私の最後のキスも貴方がいいよ。

なんて言ったら、どんな反応してくれるかな?




はじめもさいごも君がいい
(「…あとから言ってみよ」)





あとがき

黒尾くんもなまえちゃんも、お互いが初めての彼女彼氏です。
幼馴染で、生まれた時から一緒でした。





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