私だけの彼氏様





お風呂から上がって、潔子とやっちゃんと部屋に戻ろうとした時、孝支に呼び止められた。


「なまえ、私達先に行ってるわね」

「ん、あとから行く」


孝支もお風呂上がりだったようで、髪が少し濡れている。


「なまえ、髪濡れてんべ?」

「乾かすの面倒くさいんだもん」

それにこれから片付けやら、明日の準備をしないといけない。
髪をゆっくり乾かす暇もない。

「乾かしてやんよ」

「え、孝支が?」

孝支は三年男子部屋へと私を連れて行く。
部屋に入ればそこは無人だった。

「あれ、大地とか旭は?」

「大地は主将の集まりで、旭はまだ風呂」

「旭は髪多いから乾かすの大変だもんね」

なんて二人で笑って。
今頃旭、噂されてくしゃみしてるかも。

部屋の真ん中あたりに座った孝支に手招きされて、立てられた足の間に座る。
そして孝支の胸に体重をかけたら、「こら、俺が濡れるだろー?」って笑ってぺちんって頭を叩かれた。



「熱くない?」

「ん、くるしゅうない」

「ハハ、なんだべそれ」


んー気持ちいい。孝支は髪を乾かすのが上手い。

「いかがですか?お嬢様」

なんて、顔を覗き込まれて、

「いい感じよ」

なんて、ちょっとおすまししたり。
孝支みたいな執事がいたら、毎日甲斐甲斐しくお世話してくれるんだろうなー。


「はい、終わり」

「わー、サラサラ!ありがとう!」

「お礼はここへ」

指差すのは、にやりと笑った唇。

「恥ずかしいから無理ですーだ」

舌をべーってだして、孝支から離れようとしたら、もちろん捕まえられて、胸に引き寄せられた。


「じゃあ、俺からなまえ姫へ」

そして触れるだけの優しいキス。

微笑む孝支は完全に王子様で、私の頬はあったかくなった。



「孝支は、執事じゃなくて王子様だね」

って言ったら、

「なんだべそれ」

って笑われた。



うん、孝支は執事でもなくて、王子様でもなくて、

私だけの彼氏様。





私だけの彼氏様
(「…旭、入れよ」「む、無理だよ!殴られる!」)





あとがき

なかなかは入れず、ずっと外で待っていた旭さんと大地さんでしたとさ。




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