レンズに写る恋心




「おまえらー集まってくれ」

主将さんの一声で、練習していた部員さん達が私の目の前にゾロゾロと集まってくる。

おお…迫力が……。


「今日、部活紹介の為の写真を撮ってくれる、写真部のみょうじさん」

「あっ、みょうじなまえです。写真部の二年です。よろしくお願いします」

軽く頭を下げると、「しゃーっす」と運動部らしい挨拶をされた。


「おお!!!みょうじじゃん!」

「のやくん!」

私に駆け寄ってきたのは、のやくん。同じクラス。

「よろしくなーー!」

「うん!のやくんの写真もバッチリ撮るね」

「おうっ!!!」



練習を再開した部員さん達を、とりあえず観察。

みんなかっこいいなぁ。


「そこ、ボール飛んでくるよ」

後ろから声をかけられて、振り向けば、めっっちゃ美人のマネージャーさん。
しゃ、写真撮っていいかな…!!?

思わずカメラに手がいく。

「あ、ありがとうございます」

マネージャーさんの隣へと、避難。


「あの、マネージャーさんの写真も撮っていいですか?」

「え、私?大丈夫だけど、なんだか恥ずかしいわね」

その照れた笑顔も最高です。ありがとうございます。

少し離れたところから、仕事をしている様子を、何枚か撮らせてもらった。
これ、家宝にしよう。と心に決めた。


部員さん達に目線を戻せば、迫力のある練習風景。
また自然とカメラに手がいって、構えた。


何枚か写真を撮って、確認、撮って、確認、を繰り返す。



……主将さん、かっこいいな。

撮っていると分かる。一番、声を出して、みんなに声をかけて、動いていることが。

この前練習試合を見たとき、かっこいいなぁって思ったのは、主将さんだったんだ。

なんて今更気付く。


そして気づいてしまったら、無意識に多く撮ってしまうのは、主将さん。

…これも家宝にしよう。



練習も終わって、主将さんはもう一度私の前に部員さん達を集めてくれた。

そして、みんなにお礼を言われて、


「えっ、こ、こちらこそ…!」

と何度も頭を下げてしまった。


「みょうじー!」

「のやくん」

みんなが着替えに向かう中、声をかけてきたのはのやくん。
辺りをキョロキョロと挙動不審に見渡してから、小声で尋ねてきた。

「…お前さ、潔子さんの写真撮ってただろ?」

「潔子さん?」

「マネージャー!!」

ああ、あの美人のマネージャーさん潔子さんっていうんだ。

「あの、さ、写真現像したらくれ!」

「えっ!んー…まぁ、のやくんにならあげる。バレー部だし、同じクラスだし」

「っしゃぁあ!!みょうじ様!あざす!!!ってか撮った写真見たい!」

と、私からカメラを取り上げ、勝手に撮った写真を見始めた。

「もうっ!勝手に見ないでよ!」

ま、いっか。
のやくん鈍感そうだし、主将さんが多く写ってることなんて、気付かないよね。


「はーん…お前さ、大地さんのこと好きなのか?」

「な、なにいきなり!それに、大地さんって誰?」

ドキリと跳ねる心臓。
ニヤニヤしている、のやくんに嫌な予感がする。

「主将のこと!澤村大地さん」

…なんでこんなとこだけ敏感なの。


「わっかりやすいなー!一人だけ写ってる枚数多いぜ!!」

「……うるさい」

「潔子さんの写真くれる代わりに、手伝ってやるよ!!!」

え、また嫌な予感がするんだけど。
私が止める前に、のやくんは大声で叫んだ。

「大地さーーーーん!!!」

「ちょ、のやくん!なにしてるの!?」

手招きするのやくんに、主将さん…大地さんは不思議そうにこちらへとやってくる。

「西谷どうした?」

「まぁ、そこに立ってください」

大地さんを無理矢理私の隣に立たせて、のやくんは私から奪っていたカメラで写真を撮った。

「ありがとうございます!大丈夫です!」

大地さんは意味がわからないというように、首を傾げて、苦笑い。

「あ、みょうじさん今日はありがとうね」

「えっ…いいえ!こちらこそ、ありがとうございました」

「今度良かったら撮った写真見せてね」

そう言って大地さんは片付けへと戻っていった。


「今度また来いよ!部活!」

のやくんは私にカメラを手渡して、走って去っていった。

フォルダを見れば、間抜け顔の私とポカンとしている大地さんが並んで写っていた。



「へへ」

思わずにやけてしまう。
のやくんには、今度お礼しないとな。





レンズに写る恋心
(いつか笑顔のツーショット撮りたいな…)





あとがき

これからどうなるのでしょうか。




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