げんきがでる





「こんにちは」

「おーもうすぐ終わるからちょっと待ってな」

嶋田さんにいつものようにサーブの練習を見てもらいに来た。

そして最近、嶋田さんが着替えてくる間待ってる俺は、こっそりとある女の子を目で追ってしまう。

名前も知らないけれど、可愛い女の子。


ここのエプロンを着けてるってことは、きっと嶋田マートでアルバイトしてるんだと思う。

可愛いなぁ…。

ジッと見ていたら、思わず目が合ってしまって、急いで目を反らしたあと、身体を反転させる。
すると、女の子は少し駆け足でこちらへと近づいて来て、俺の肩をトントン、遠慮がちに叩いた。

「あ、の…」

「は、はははい」

声が震える。俺になんの用だろう。

「あの、いつも嶋田さんと練習してますよね…?」

「え?あ、そうです」

「いつも凄いなぁって思いながら見てて、その、良かったらこれ」

その子が俺に手渡してきたのは、リストバンド。

「私のお兄ちゃんも、えっと、スポーツしてて…リストバンドはあったほうが気合いがはいる、みたいなこと言ってて、その……だから」

俺はそっとリストバンドを受け取った。
よく分からないけど、今ものすごく嬉しいことだけは分かる。

「ありがとう、ございます」

大丈夫かな。俺の顔、にやけてないかな。

「いえっ…今日も頑張ってくださいね」

女の子は少しだけ笑顔を見せて、仕事へと戻っていった。





ああ、今日の練習はいつもの5倍くらい頑張れる気がするや。




げんきがでる
(おくりもの)





あとがき

山口に幸あれ!




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