狙った獲物は逃がさない



「かーげやまっ!ポッキーゲームしよ!」

「…ポッキー、ゲームってなんすか」

うん、影山は知らないだろうって分かってた。だから言ったんだもん。

今日の私の目標は、影山の照れ顔を見ること。


「とりあえずはい、ポッキーくわえて」

私が影山の口の前にポッキーを置けば、普通にぽりぽりと噛んでしまった。

「違う!そーっとくわえるだけでいいの」

私がお手本を見せれば、影山は不思議そうに真似して、唇でポッキーをくわえた。


「そうそう!じゃあそのままでいてね?口から離したら…負けだからね?」

“負け”という言葉に、ぴくりと反応する影山に思わず笑みがこぼれる。
ほんっとに負けず嫌いなんだから。

真剣な顔でポッキーをくわえてる姿は、とてもマヌケで写真を撮りたくなったけど、我慢。

「じゃあゲームスタート!」

私はニヤリと笑って、影山がくわえたポッキーの反対側をくわえて、ぽりぽりと食べ進んでいく。

ちらっと影山の顔を見れば、しぬほど驚いて目をキョロキョロさせたり、パチパチさせてた。すっごい面白い。笑って口から離しそうになった。
危ない、危ない…。

もうすぐで、唇に触れるという時に、我慢できなくなったのか、影山が顔を背けてしまって、ポッキーは小さな音を立てて折れてしまった。

「はい、影山の負け」

「っ、ちょ、なまえさ、なに…は?なにしてんの…」

照れるというより、テンパる影山を笑ったら、ムッとした顔をされた。ごめんって。

「影山の照れ顔みたいなーって思っただけ」

「…っ、なまえさんなんなんすか!!」

「へへ、ごめんね?」

影山の唇についたチョコをぺろりと舐めとったら一瞬フリーズしたあと、腕で顔を隠して、ため息をつかれた。


「……今日、部活終わったら、うち来てください」

「え?なんで?」

「抱きたいっす」

「……は?」

え、ごめん。今この学校という場所にはとてもじゃないけど相応しくないフレーズが聞こえたんですけど?

「だ、か、ら、抱きたいって言ってんすよ。なまえさんのせいですから。拒否権ないっすから」


影山の表情は、完全に私という獲物を狙っていて、ああ、これは逃げられないなって思った。




「とりあえず今ムラムラしてるんで、キスしていいっすか」

「…ど、どうぞ」


狙った獲物は逃がさない
(部活終わるのが楽しみだなんて言えない…)





あとがき

どうぞ好きなだけヤッテクダサイ。


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