「苦悩」


「ねぇ、日和〜…あなた、いつになったらお母さんに彼氏の1人や2人紹介してくれるの?」
「へっ?」

きっかけは、母のこの言葉だった。


『母さーん、今日家に友達呼んでいい?』
『あら、またこないだの女の子?』
『ううん、今日は一緒に委員会やってる子。』
『あらまぁ〜。』

私の弟・光は、めちゃくちゃモテる。

それもそのはず、なかなか容姿端麗であり、体型もスラリとしていて、性格もまあまあいい。
その上高校も白鳥沢を首席で入学、バスケ部では一年唯一のレギュラー。

そんな絵に描いたような完璧男子である光は、めちゃくちゃモテるし、優しいだけでなくギャグセンス高いので、男女ともに人気らしい。

白鳥沢の光源氏、なんて呼ばれているらしい。

しかし、何故か彼女は作らないらしいし、モテていることも自覚がないらしい。


それに比べて、私はどうか。
顔は普通、体型も普通、性格も普通。
なのに、勉強・運動はまるでダメ、手先も不器用だし、よく何もない所でコケるし、彼氏いない歴イコール年齢。あ、最後のは光と同じか。じゃあ、告白されない歴イコール年齢。

光とは正反対の、ダメ女…。

そんな私でも、お母さんはなんとか私を白鳥沢に入学させてくれた。


お母さんを、安心させてあげたい…。



でも、彼氏なんてそんな1日2日で出来る筈もなく。


「いってきま〜す…。」
「あ、姉ちゃん!弁当忘れてるよ!」
「あ…いつもありがとう。」
「姉ちゃんのためなら弁当の2個や3個朝飯前だよ!」
「うん…1個で十分だよ。」

今日は朝練がない白鳥沢の光源氏さん。
光はちょっとシスコンが入っているみたいなんです。
…もしかして、告白されてもオッケーされないのって、わたしのせいなの…?


彼氏が出来ないことを考えてもしょうがないので、考えるのをやめて落ち込みながら登校した。
すると、学校を目前にして、後ろから誰かが私の肩を叩いた。

「おはよう。日和。」
「!若…。」

牛島若利。
幼なじみであり、我らが白鳥沢男子バレー部のキャプテン、ウシワカ様のおなりである。

「おはよう…。」
「どうした?元気がないな。」

さすがに鋭い。

「うん、実はね…、」

ハッとする。
そうだ、その手があった…!


若を彼氏として、お母さんに紹介すればいいんだ!

とりあえず紹介さえすれば、お母さんも安心してくれるだろう。
お母さんも、若がバレーを頑張ってることは知ってるんだし、その後は数日後くらいに「やっぱり若はバレーに集中したいんだって」と別れた体にすればいい。

完・璧!


「?どうした。」
「あ、ううん!なんでもないの!」

若はこれから朝練。練習前に、面倒ごとをふっかけたくはない。

「お昼の時に話すよ。」
「昼か?そうか、わかった。食堂だな?」
「うん!」

そして私は、着替えるため部室へ入った若と別れ、ネットを張る準備を始めた。



続く



公開:2016/07/13/水


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