「顔見せに行くよ!」


「じゃあ、今みんな体育館で練習してるから、とりあえず今日は顔見せだけするか。」
「!はい!」
「時間があるようなら、練習の流れとかも見ていくといい。」
「そうですよね。それなら、最後までいさせてください。」
「お、じゃあ頼むぞ。」


男子バレー部顧問の直井と共に職員室を出て、体育館へと向かう日和。
雑談をしながら歩く2人だが、直井は隣を歩く女子生徒がどこかぎこちないことに気づいた。

「ははは。緊張してるのか?」
「!い、いいえ…そういうわけでは。」

少しはにかんでみると、直井は教師の顔でフッと笑った。

「そうか、ならいいが。」
「緊張、というより、たのしみなんです!」
「ほう。」

そういった日和の顔は、確かにキラキラと輝いているように見えた。

「確か白森は、前の高校でもバレー部のマネージャーをしていたんだってな。」
「はい。女子バレーでしたけど…。」
「まあ、仕事内容はそんなには変わらないだろう。周りが男ばかりだから、ちょっとむさ苦しいかもしれないけどな。」

直井がハハハ、と笑うので、日和もつられて笑った。

「大丈夫ですよ、わたし、どんな環境でも、バレーに関わっていられるならそれでいいので。」

お世辞でもなく、素直な気持ちを伝える。
直井は、少し驚いたような顔をする。

「そんなに、バレーが好きなんだな。ウチも、上を目指しているチームだから、やりがいがあると思うぞ。」

その言葉を聞き、日和はワクワクする気持ちを抑えられなかった。

「実は、ウチの男子バレー部はマネージャーがいなくてね。君と同じクラスの山本なんかは、毎日のように女子のマネージャーが欲しいと駄々をこねるんで困ってんだ。」
「そ、そんなにですか…。まあ確かに、マネージャーがいれば選手はバレーに専念できますもんね。」


そうだ、わたしも"選手だった時"…、サポートしてくれる人がいたら、どんなに楽だったか。
サポートしてくれる人がいたら…今でもバレーをやっていられたかもしれない。

日和は、昔のことを思い出していた。
だが、そんな思いが今の日和の"サポートする側"としての原動力になっているのだ。



「さぁ、体育館だぞ。」


「…はい!失礼します!」



つづく


公開:2016/11/14/月


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