現代っ子、国見くん
画面には、無機質な文字が並ぶ。
俺がどんなに日和ちゃんを好きで好きで仕方なくても、指先で生み出した『好き』の二文字では、文字としての『好き』しか日和ちゃんには伝わらない。
…もどかしい。
『どうしたの?英。』
「…うん、別に…えーと、なんでもないけど。」
『わざわざ電話してきて、なんでもないってことはないでしょ?』
日和ちゃんの声は、明るい。
日和ちゃんはつらくないのだろうか。
俺は今、とてもつらいのに。
日和ちゃんに会いたくて、仕方ないのに。
「…。」
『…。』
数秒間、お互い黙り込んだ。
電話したはいいけど、特に話したいことがあるわけじゃない。
強いて言えば、「会いたい」。
だけど、俺の性格上、それは容易く言える言葉じゃない。
『…英?』
痺れを切らしたように、日和ちゃんが俺を呼んだ。
よく聞くと、サラサラと紙に何か書くような音がする。
勉強してたのかな、悪いことしたかな。
「…あ、のさ。」
『うん。』
「………明日の、3限のことだけど…。」
違う、そんなことじゃない。
なのに、口から出る言葉は、いつも本心からの言葉じゃないんだ。
どうして、いつも…。
日和ちゃんは、黙っている。
適当に間を繋ぐ俺の言葉に、適当に相槌を打っている。
しかし、少しして、コロンとシャーペンを投げるような音がした。
『ね、英。なんかさ、会いたいなぁ。』
「…え?」
『会いたい。』
…俺が、言いたかったのに、言えなかった言葉を、いとも簡単に発してしまった。
ずるい。日和ちゃんは、ずるい。
「…しょうがないな。面倒だけど、行くよ。」
『あれ?面倒なら、わざわざいいんだよ?』
「……待ってて。」
『ふふ!待ってるね。』
fin.
○あとがき
スマホに頼り切り(依存傾向)な面もあるくせに、天邪鬼でそれを好ましく思ってなく、不器用でめんどくさがりでさみしがりで人肌恋しい、そんな現代っ子のイメージ。
かわいくて憎めない現代っ子国見くん。
名前にちゃん呼びとかしてたらとても可愛いです。
閲覧ありがとうございます。
公開:2016/09/08/木
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