そんなサプライズ
『クリスマス、帰れそうにないや…』
『ごめんねー、もっと早く言えばよかった(>_<)』
『風邪ひかないようにね!』
「…はぁ。」
クリスマスの数日前。
徹からそんな連絡がきた。
徹と過ごせないというのは、ちょっと予想できたからいいけど。
まじで、もっと早く言えよボゲ…!
徹は全日本バレーの代表メンバーとして収集され、絶賛強化合宿中。
私も徹も、まだ東京に来てそんなに長くない。
だから友達という友達もまだいないから、そんな急に予定をキャンセルされても困る。
今から宮城に帰っても遊んでくれる人いなそうだし、どうせ年末年始に里帰りするだろうからクリスマスに帰っても…といった感じだ。
つまり、私は急遽クリぼっちになってしまったわけだ。
「…ばーか。徹のばーか。」
徹がクリスマスに合わせて帰れるって言うからわざわざ仕事代わってもらったっていうのに。
なんだこの仕打ちは。
私はごろんと寝転がり、そのまま眠ってしまった。
そうして迎えた24日。
本当なら徹と迎えていたのに。
プレゼントまで用意したのに。
徹がレストラン予約するって言うから、チキンもケーキもないし。
あーあ…今日はクリスマスらしからぬシンプルなご飯になりそうだ。
もういいやふて寝しよ。
ソファに沈み、目を閉じたその時。
ピンポーン
急に鳴り響くチャイムにソファから跳ね起きる。
「?なんだろう。」
覗き穴から見えたのは何かを持った人影で。
「宅配便です。」
そんな声に、記憶を巡らせるが思い当たる節はない。
なんだろう、お母さんからの仕送りはこの前来たし…。
もしかして徹からのプレゼント…!?そんな、わざわざ宅配便なんか使わなくてよかったのに…。
私がはやる気持ちを抑えてドアを開けると、業者さんは荷物を手渡してきた。
ダンボール箱を想像した私は意表をつかれる。
え、これ、普通のプレゼント…剥き出しで送ってくるとか、もしかして練習で疲れて頭沸いてるの…?
「では受け取りのサインを…。」
ん?これ、綺麗にラッピングされてるけど、伝票どこについてるの…?
私が荷物のあちこちを見ていると…。
「受領証明はキスしてくれればいいかな〜。」
急に声が軽くなり、業者さんが目深に被ったキャップをズラすと、そこには見慣れた顔が。
「は?…え!?徹!?」
今日、会えるはずのなかった徹がそこにいた。
「…帰れないって、嘘ついたの?サプライズのために?」
「エッ!?違うよ!?本当に急遽帰れたんだって!!てか日和ちゃん、せっかく会えた愛しの彼氏に冷たくない!?」
「だって……。」
勿論、会いたかった。会いたかったに決まってる。
でも、その気持ちを裏切られて、ようやくちょっとずつ受け入れられてきて、なのに今、目の前にいて…。
「…心の整理ができないよ。」
「ふふふ、そんなに俺が恋しかった?」
「…うるさい。」
「図星なんだね?」
抱き締める腕は確かに徹で。
本当に、帰ってきてくれたんだと嬉しくなる。
「ぶっちゃけ、日和ちゃんに会いたくて無理言って帰ってきました。」
「…ありがと。」
「ふふふ。」
まったく、とんでもないサプライズだよ。
まぁでも、今日は一緒に過ごせるんだ。
クリスマス、一人じゃないどころか徹がいるんだ。
それはやっぱり、嬉しい。
私は徹の腕の中で、徐々に体温が上がるのが分かった。
…とはいえ。
「…あのさ、寒いから中入らない?」
「え?あ、ごめんなさい。」
やっぱり寒いもんは寒い。
「どっか食べ行く?」
「無理にいいよ、徹帰ったばっかで疲れてるでしょ。スーパーでも行ってシャンパン買ってこよ。」
「あ、いいね〜。」
fin.
公開:2017/12/25
[ 44/50 ]
[*prev] [next#]
[目次に戻る]
[しおりを挟む] [コメント・誤字脱字報告]