猫になってみた
今のわたし、完璧に猫。
黒いパーカー、黒いスカート、黒ニーハイ。
そして黒い猫耳、黒い尻尾、肉球付き手袋まで。
猫!わたしは今、猫なの!!
「にゃーん。」
「…どうしたの。」
ノリ悪い!研磨ノリ悪い!!
「猫ですけど!?」
「猫は猫って言わないよ。」
「…にゃーん。」
「どうしたの。」
ああ、これは無限ループだ。
わたしはため息をついた。
「今日ハロウィンでしょ?」
「え。」
「えっ?」
わたしは慌ててカレンダーを見た。
「いや、ハロウィンじゃん!焦らせないでよ、もう…。」
「別に焦らせようとしたわけじゃないけど…。なんで外国のイベントに全力になってるの。」
わたしは更にため息を吐き、頭を抱えた。
ほんっと冷めてる!つまらん男よ。
「研磨、日本人はとにかくお祭り根性!海外の楽しいイベントは日本風にアレンジして盛大にやろうっていうのが日本よ!」
「いや、ハロウィンもバレンタインも全部お菓子屋が儲けるための戦略でしょ。」
「まあそうだとしても楽しければいいのよ。」
わたしはめんどくさくなって、最終的には投げやりになってしまった。
突然ウキウキだったわたしが冷めてしまったのを気にしてか、研磨は手元のゲーム機から顔を上げた。
「ねえ、日和。」
「にゃんですか。」
「よかった、まだ猫だ。」
「?」
研磨は口角を上げて、小さく笑った。
わたしは少し驚く。
「まだ猫でいてほしい?」
「え、……うーん、……まあ。」
研磨は正直どうでもよさそうだった。
わたしは唇を尖らせる。
別に、猫のコスプレをしたからって研磨に何かしてほしいとか、声をかけてほしいとかそういうものはない。
けど、ここまでどうでもよさそうな反応をされると、流石にヘコむ。
わたしはやけくそになって研磨に近付いた。
「ねー。」
「なに。」
「遊んでー。」
「…。」
研磨はため息を吐く。
そして、ようやくゲームの電源を切ってゲーム機をテーブルの上に置いた。
「何して遊ぶの。」
「え?」
「考えてないの?」
研磨は眉をひそめた。
研磨が構ってくれると思わなかったから、そこまで考えてなかった。
わたしは小さく唇を噛んだ。
「えーとー…。」
「じゃあ、日和。トリックオアトリート。」
「え?」
わたしはピンときた。
この流れは…ヤバイやつだ。
「え?…えーと…?」
「だから、トリックオアトリートだよ。お菓子くれなきゃ、イタズラ…しちゃうぞ。」
「ちょ、怖い怖い。せめて笑って。」
「笑ってる。」
「いや、笑ってない。」
わたしが苦笑すると、研磨は首を傾けた。
「いいから、トリックオアトリートだよ。お菓子、持ってないの?」
「う…。」
わたしは、足りない脳みそを一生懸命に回転させた。
「あ!さっき研磨海外のイベント嫌いって言ってたじゃん!」
「いや、言ってない。お菓子屋の戦略って言っただけ。」
「くっ…!」
「ねえ、もう観念したら?」
ぐいっと肩を引っ張られた。
キスされる!
と思ったら、顔は通り過ぎた。
研磨の細い髪の毛が、頬をくすぐる。
「かわいい。」
耳元で、ボソッと、低い声で囁かれた。
わたしはぴしりと動けなくなる。
顔が離れて、クスッと笑う研磨。
きっとわたしの顔は真っ赤だろう。
倒れるように抱き着く。
「の、悩殺……。」
「日和も結構悩殺一歩手前な感じ。」
「手前かぁ…。」
ありがとうドン・〇ホーテ。
fin.
オチが…。
公開:2016/10/31/月
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