雨の音


雨の音だ。


ダメだ、

おちおち寝てられない。



寝る前にスマホの画面を見すぎたせいもあると思う。
頭が冴えて眠れない。

それに加えて、この雨だ。

台風が近付いてるらしい。

夜、暗闇。
雨、騒音。
この状況下、ぐっすりと眠れるほど、わたしは図太い神経をしていない。


こんな夜は、

どうしてもあなたに会いたくなる。



「よぉ。」

「…なんでいるの?」

「えーと…幼なじみだから?」
「いや、ほんとわけわかんないんだけど。…クロちゃん。」

何故かいた。
会いたかった人が。


「俺はわかったぞ。」
「何が?」
「日和って昔から夜中に雨音がうるさくなると全く眠れなくなってたろ。」

そうだっけ。
なんで、そんなこと覚えてるんだ、この世話焼き幼なじみは。

「…。」
「そんで、俺にぴったりくっついて離れなかったろ。そうすることでようやく眠れてたろ。あれのこと。」
「……覚えてませんね。」

わたしが膝を抱えて、大袈裟に首を傾げる素振りを見せるが、クロちゃんはあくまで真面目なトーンで話す。

少しだけ間を開ける。

「お前、平穏を取り戻そうとしてたんだな。」
「…はい?」

クロちゃんの目があまりにも真剣なので、つい笑いそうになってしまった。
平穏、って…。

「夜中に雨が降るっていう異常事態から脱したかったんだろ?そんで、"いつも一緒にいる俺"が必要だったってわけだ。」

ああ。
…まあ、なんか、わからない気はしないでもないけど。

「…知らない。」
「日和は知らなくても、そーいうことなんだよ。」
「適当でしょ?」
「いーや、そうでもねーさ。」

クロちゃんは、ドヤ顔でそれだけ言うと、当たり前のようにベッドに乗り、わたしが自分に掛けていたブランケットに潜り込んできた。

それから、腕を引っ張って、寝ろよと無言で言う。
諦めるように溜息を吐いて、再び寝転がる。

「俺もこーいう夜はなんか、抱き枕的なのが欲しかったんだよね。」
「わたし抱き枕かよ。」

そう悪態をつくけど、逞しい腕にぎゅうと抱きしめられると、なんだか安心してしまう。
悔しいけどね。


「ほら、俺はちゃんと隣にいるからな。おやすみ。」
「…おやすみ。」
「俺と寝るってことは早起き確定だからな〜。」
「げ…。」



fin.





○あとがき

なんでクロいんの?ってのがどうしても気になる方へ。

幼なじみ設定によくある
「家が隣で隙間がないくらいの近さであり、そして何故かお互いの部屋の窓が同じ高さ、同じ位置にあるため窓からの侵入が可能」
ってことでいいと思います。笑



公開:2016/10/02/日


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